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発達障害で障害年金はもらえる?ASD・ADHDの認定基準と申請のポイント

はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。

発達障害は、障害年金の対象となる障害の一つです。

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)のある方についても、日常生活や仕事に大きな支障が生じている場合には、障害年金を受給できる可能性があります。

ただし、診断名だけで受給が決まるわけではありません。実際にどのような困難が生じ、周囲からどの程度の援助や配慮を必要としているのかなどを踏まえて判断されます。

また、発達障害は幼少期から特性がみられるものですが、障害年金では初診日の考え方にも注意が必要です。

この記事では、発達障害による障害年金の認定基準と、申請を検討する際に確認しておきたいポイントについて、実務の視点も交えて解説します。

発達障害で障害年金を受け取れるのは、どのような場合?

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)は、障害年金の認定対象となる発達障害に含まれます。

障害年金では、対人関係や意思疎通、社会生活への適応の難しさ、日常生活に必要な援助の状況などを総合的に判断します。

障害等級の大まかな目安は、次のとおりです。

障害等級障害状態の目安
1級日常生活への適応が困難で、常時の援助を必要とするような状態
2級日常生活への適応にあたって援助が必要となる状態
3級社会性やコミュニケーション等の困難により、労働が著しい制限を受ける状態

これは大まかな目安であり、援助の有無だけでなく、社会性や意思疎通、行動面の困難と、日常生活・就労への影響を総合して判断されます。

また、障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級が対象です。初診日当時に加入していた年金制度によって、対象となる等級が異なります。

なお、発達障害に加えてうつ病などの精神疾患が併存する場合もあり、それぞれの症状や生活への影響も踏まえて判断されます。

参考:日本年金機構「障害認定基準 第8節/精神の障害」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf

発達障害の審査では、日常生活のどのような点を確認する?

発達障害では、特性の現れ方や生活上の困難が人によって異なります。

ASDでは、相手の意図を理解することや対人関係を維持すること、急な予定変更への対応などが難しい場合があります。

ADHDでは、不注意や衝動性、物事の段取り、時間管理、複数のことを同時に進めることなどに困難が生じる場合があります。

ASDとADHDの両方の診断を受けている方もおり、それぞれの特性が重なって生活や仕事に支障が生じることもあります。

障害年金では、こうした特性が実際の日常生活にどのような影響を与えているかを確認します。

例えば、必要な手続きや支払いの期限を管理できない、家事を順序立てて進められない、対人関係で繰り返し問題が生じるといった状況です。

また、知的能力が高いことや、大学を卒業していることだけで、日常生活能力が十分にあると判断できるわけではありません。

実際のご相談でも、大学卒業や就労の経験がある一方で、生活全般の段取りや金銭管理、対人関係などに大きな困難が生じている方がいらっしゃいます。

学歴や仕事の経験だけでは分からない、普段の生活の実態を見ることが重要です。

家族等の援助や、一人暮らしの場合の生活状況

ご家族が食事を準備し、予定や金銭を管理していたり、服薬や身の回りのことについて継続的に声掛けをしていたりする場合があります。

また、短時間の勤務を続けている一方で、家事や日常生活を維持するために、家族やヘルパーの援助を必要としている方もいらっしゃいます。

こうした場合には、一見すると生活を送れているようでも、周囲の援助がなければどの程度のことができるのか、という視点が欠かせません。

一方、一人暮らしをしていても、食事や掃除、金銭管理、必要な手続きなどが十分にできず、日常生活に大きな支障が生じている場合もあります。

一人暮らしであることは生活状況を判断するうえでの一つの要素ですが、それだけで自立した生活を送れていると判断されるわけではありません。実際に弊所で対応した案件でも、一人暮らしをされている方が障害年金の認定に至った例は少なくありません。

障害者雇用など、働いている場合はどう考える?

発達障害のある方の中には、一般雇用・障害者雇用のいずれでも、職場の配慮を受けながら働いている方がいらっしゃいます。

障害年金では、働いているという事実だけで、直ちに対象外となるわけではありません。

一方で、就労状況は重要な判断材料です。勤務時間や仕事内容、欠勤・遅刻・早退の状況に加えて、職場でどのような援助や配慮を受けているのかも確認します。

職場で受けている配慮や援助の内容が重要です

発達障害のある方が働く場合、特性に応じて業務内容を限定したり、作業手順を個別に説明したりする配慮が行われることがあります。

例えば、決められた作業だけを担当している、複数の指示を一度に受けないようにしてもらっている、作業内容が変わるたびに周囲の援助を必要としている、といった状況です。

実際に弊所で対応した事例では、障害者雇用で工場に勤務していた方について、作業内容の変更への対応や、周囲との意思疎通などに継続的な援助が必要な状況を確認しました。

そのため、仕事内容だけでなく、どのような場面で援助を必要としているのかを詳しく伺い、主治医の先生へお渡しする参考資料に整理しました。この方は、その後、障害基礎年金2級の支給が決定しています。

ただし、これは個別の障害状態や生活・就労状況などを踏まえた結果であり、障害者雇用であることや、職場で配慮を受けていることだけで認定が決まるわけではありません。

また、精神疾患のある方の場合、一般雇用でフルタイム勤務をしていると、実務上、障害年金の認定が難しくなる傾向があります。しかし、必ずしも不支給となるわけではありません。

弊所で対応した別の事例では、うつ病とASD・ADHDが併存し、一般雇用でフルタイム勤務をしていた方がいらっしゃいました。

診断書では日常生活能力の各項目について助言や指導が必要と評価されており、最終的に障害厚生年金3級の支給が決定しています。

このように、一般雇用か障害者雇用かという区分だけでなく、仕事内容や勤務の安定性、必要な配慮・援助など、実際の就労状況を踏まえて判断されます。

就労と障害年金の関係については、「働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイント」でも詳しく解説しています。

参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html

発達障害の初診日は、いつになる?

発達障害による障害年金の請求では、初診日の確認が非常に重要です。

ASDやADHDは、通常、幼少期から特性がみられるものですが、知的障害を伴わない発達障害では、原則として、その症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日となります。

生まれながらの知的障害について、出生日を初診日とする取扱いとは異なります。

そのため、子どもの頃から特性があったとしても、それだけで初診日が決まるわけではありません。また、発達障害という診断名が確定した日や、薬の服用を始めた日が初診日になるとも限りません。

最初はうつ症状などで受診している場合もあります

実務上、特に注意したいのは、最初から発達障害と診断されているとは限らないという点です。

例えば、初めて精神科を受診した際には、うつ病や不安などの診断で治療を受け、その後の診療や検査によってASD・ADHDが判明する場合があります。

このような場合には、当初の受診からの一連の経過を確認し、同一の傷病と判断されれば、発達障害と診断される前の受診日が初診日となることがあります。

一方、てんかんや統合失調症などの受診歴については、発達障害とは別の傷病として扱う必要がある場合もあります。以前から精神科や神経内科を受診していたという理由だけで、すべてを同一の傷病と考えることはできません。

弊所でも、現在の診断名だけでなく、最初にどのような症状で受診し、その後、診断や治療がどのように変わってきたのかを時系列で確認しています。

また、初診から長い年月が経過し、当時のカルテが残っていないケースもあります。

実際に弊所で対応した案件では、初診と考えられる医療機関のカルテがすでに廃棄されていました。当時利用していた調剤薬局に確認していただき、処方元の医療機関や調剤日が記載された、お薬手帳用のシールを入手できたことがあります。

調剤日だけで初診日を特定できるとは限りませんが、後に受診した医療機関の記録などとあわせて、当時の受診状況を確認する手掛かりとなります。

初診日は、請求する年金制度や保険料納付要件にも関わるため、現在の診断名だけでなく、実際の受診歴を確認することが欠かせません。

詳しくは、「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」をご参照ください。

参考:日本年金機構「障害年金講座〈基本事項〉(かけはし別冊)」

https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/bessatu.files/bessatu.pdf

障害認定日と、現在の状態を分けて確認します

障害年金では、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となります。

ただし、20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合には、20歳到達日と障害認定日の関係など、特別な取扱いがあります。

この点については、「20歳前傷病の障害年金とは?」で詳しく説明しています。

発達障害のある方の場合、学生時代、就職後、休職・退職後などで、生活環境や必要な援助の内容が変わることがあります。

例えば、障害認定日頃には勤務を続けていたものの、その後、仕事や日常生活での困難が大きくなり、退職に至った場合もあります。

そのため、現在の障害状態と、障害認定日頃の状態を分けて確認する必要があります。

弊所では、まず現在の症状や生活状況から今後の分について受給が見込めるかを確認し、そのうえで、障害認定日頃の状態や、その時期の診断書を医師に作成していただけるかどうかを確認しています。

なお、事後重症請求では、支給が認められた場合、原則として請求月の翌月分からの支給となります。

過去にさかのぼる請求については、「障害年金は過去にさかのぼって受給できる?遡及請求の仕組み」でも解説しています。

日頃の診察で、生活や仕事の困りごとを伝えておきます

発達障害による障害年金の請求では、主治医に作成していただく精神の障害用診断書が重要な資料となります。

診断書には、傷病名や治療経過だけでなく、日常生活能力や就労状況などを記載する欄があります。

発達障害の場合、幼少期から続いている特性や、それによる日常生活の困難がご本人にとって当たり前になっており、診察時に十分に伝えられていないこともあります。普段の生活や仕事で困っていること、周囲から受けている援助などは、日頃の診察の中で主治医に伝えておくことが大切です。

弊所では、必要に応じてご本人様やご家族様から詳しくお話を伺い、主治医の先生へお渡しする参考資料を作成しています。

例えば、「段取りが苦手」であれば、複数の作業が重なると家事や必要な手続きが滞る状況を確認します。また、「対人関係が苦手」であれば、相手の意図を理解できず、職場や日常生活で実際にどのような問題が生じているのかを伺い、主治医の先生に伝わるよう整理します。

また、障害者雇用などで働いている場合には、仕事内容や勤務時間だけでなく、作業の変更に対応できないことや、周囲から継続的な指導・確認を受けていることなど、実際の就労状況も確認します。

診断書は、日頃の診療経過を踏まえ、医師が医学的に判断して作成するものです。

また、診断書が完成した際には、受診歴や休職・退職の時期、就労状況などについて、受診状況等証明書や病歴・就労状況等申立書と整合しているかを確認します。

実際の経過と異なる記載が見つかった場合には、事実関係を確認し、必要に応じて医療機関へ確認することになります。

診断書の各項目については、「障害年金の精神の診断書とは?日常生活能力や就労状況のポイント」で、申立書の作成については「病歴・就労状況等申立書とは?書き方・作成のポイント」で詳しく解説しています。

参考:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」

https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html

まとめ

ASD・ADHDなどの発達障害は障害年金の対象となりますが、診断名だけで受給が決まるわけではありません。

日常生活で生じている困難や、家族・職場などから受けている援助や配慮、実際の就労状況などが重要になります。

また、生来の特性がある場合でも初診日の確認が必要であり、最初は別の診断名で治療を受けていることもあります。

日常生活や仕事でのお困りごと、必要としている援助については、普段の診察の中で主治医に正確に伝えておくことが大切です。また、障害年金の請求にあたっては、これまでの受診歴や生活・就労の経過を整理し、お困りごとも適切に申立書に記載することが望まれます。


少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。

発達障害による障害年金の請求について、受給の可能性やお手続きにお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

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