障害年金の精神の診断書とは?日常生活能力や就労状況のポイント
はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。
「生活がかなり大変なのですが、障害年金の対象になるでしょうか」
「一人暮らしですが、家事もほとんどできず、生活するだけで精一杯です」
精神の障害で障害年金をご相談いただく際には、このように、現在の生活の大変さについてお話しいただくことが多くあります。
障害年金の精神の診断書では、こうしたご状況を、病気や障害によって日常生活や社会生活にどの程度の制限が生じているのかという観点から確認します。
精神の障害用診断書では、食事や身の回りのこと、通院・服薬、対人関係などについて、病気や障害によってどのような支障が生じているのかを確認します。
また、一人暮らしか、ご家族と同居しているかという形式だけではなく、実際にどのような生活を送り、どの程度の援助を必要としているのかも重要です。
この記事では、精神の障害用診断書について、特に重要となる日常生活能力や援助の状況、就労状況を中心に解説します。
目次
障害年金の精神の診断書では何が確認される?
精神の障害用診断書は、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神障害のほか、知的障害や発達障害などの障害年金請求にも使用されます。
診断書には、傷病名やこれまでの治療経過、診断書の対象となる時点の病状などに加えて、生活環境、日常生活能力、就労状況などを記載する欄があります。
障害年金では、精神疾患があるという事実だけではなく、その病気や障害によって日常生活や社会生活にどの程度の制限が生じているのかが重要になります。
病歴や治療経過、病状、日常生活能力、就労状況などをあわせて確認し、障害の程度が判断されます。
参考:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html
特に重要となる「日常生活能力の判定」
精神の障害用診断書には、「日常生活能力の判定」という項目があります。
確認されるのは、次の7項目です。
- 適切な食事
- 身辺の清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院と服薬
- 他人との意思伝達及び対人関係
- 身辺の安全保持及び危機対応
- 社会性
それぞれについて、ご本人様だけでどの程度行えるのか、助言や援助を必要とするのかなどが評価されます。
ここで重要なのは、現在、ご家族などの援助を受けながら生活できているかどうかだけを見るものではないということです。
診断書では、単身で生活するとした場合に可能かどうかという観点で判断することが示されています。
「できている」という結果だけでは分からないことがあります
たとえば、買い物に行った、入浴した、家事をしたという事実があっても、それだけで日常生活能力を判断できるとは限りません。
体調のよい日には家事ができても、体調が悪くなると何日も手をつけられないことがあります。
一度できたかどうかだけではなく、必要なことを自発的に、適切な内容や頻度で続けられているかという視点で確認します。
また、現在できていることについても、ご家族からの声掛けや手助けがあって初めてできている場合があります。
そのため、何ができたかという結果だけではなく、どのような援助があればできるのか、援助がなければどのような状態になるのかという実際の生活状況を確認していきます。
日本年金機構の記載要領でも、診察時の一時的な状態だけではなく、一定期間の状態の変動を踏まえることや、支援が常態化している場合には、支援がない状態を想定して日常生活能力を評価することが示されています。
参考:日本年金機構「診断書(精神の障害用)記載要領」
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.files/04-3.pdf
家族などから受けている援助も確認します
精神の障害では、ご本人様だけで生活が成り立っているのではなく、ご家族や福祉サービスなどの援助によって生活が維持されていることがあります。
食事、掃除、金銭管理、服薬、通院、行政手続きなどについて、病気や障害のためにご家族の声掛けや手助けがなければ続けられない場合には、その援助の内容も確認します。
ご家族が日常的に対応しているため、ご本人様自身は「援助を受けている」という認識をあまり持っていないこともあります。
一方で、援助を受けていないことと、援助が必要ないことは同じではありません。
援助してくれる方がいないために、食事や掃除、金銭管理などが十分にできないまま生活していることもあります。
現在何とか生活できていることと、ご本人様だけで同じ生活を安定して維持できることは、分けて考える必要があります。
一人暮らしをしていても、その事実だけで判断されません
一人暮らしをしていること自体が、障害の程度の重さを示すものではありません。
また、一人暮らしという事実だけを見ると、生活が自立しているように見えることもあります。
実際には、ご家族が定期的に援助している、訪問看護やヘルパーなどを利用している、あるいは必要な支援を受けられないまま生活が崩れている場合もあります。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでも、生活環境や家族等からの援助について考慮することが示されています。
そのため、単に「一人暮らしです」と伝えるのではなく、食事、掃除、金銭管理、通院、外出など、実際にはどのような生活を送っているのかを具体的に確認していきます。
「日常生活能力の程度」も重要な項目です
7項目の「日常生活能力の判定」とは別に、「日常生活能力の程度」という項目があります。
「日常生活能力の判定」が7つの場面ごとの状態を具体的に評価するのに対し、「日常生活能力の程度」は、日常生活全体についてどの程度の制限や援助が必要なのかを総合的に評価するものです。
精神の障害に係る等級判定ガイドラインでは、7項目の「日常生活能力の判定」の平均と、「日常生活能力の程度」の組み合わせから障害等級の目安が示されています。
ただし、その目安だけで等級が機械的に決まるわけではありません。
病状、療養状況、生活環境、就労状況なども含めて、総合的に判断されます。
そのため、日常生活能力の数字だけではなく、病状や生活環境、必要な援助なども含めて診断書全体を見る必要があります。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html
働いている場合は、実際の働き方を確認します
精神の障害用診断書には、「現症時の就労状況」を記載する欄があります。
勤務先や雇用形態、仕事の頻度、給与だけではなく、仕事内容や、仕事を続けるために受けている援助、職場での意思疎通の状況なども確認します。
働いている場合も、単に「仕事をしている」という事実だけで判断されるわけではありません。
日本年金機構の記載要領でも、就労していることだけをもって支給の可否を判断するのではなく、仕事の内容や就労状況、職場での援助などを確認することが示されています。
なお、過去の障害認定日頃について診断書を作成する場合には、現在の働き方と混同せず、その現症日時点の就労状況を確認することになります。
仕事を続けていることだけでは分からないことがあります
たとえば、職場で業務内容を限定してもらっている、体調に応じて欠勤や早退を認めてもらっている、周囲から確認や援助を受けながら勤務している、といった場合があります。
また、勤務中は何とか仕事をしていても、帰宅すると何もできず横になっている、休日はほとんど休息だけで終わるという方もいます。
現在仕事をしているという事実だけではなく、欠勤や休職を繰り返していないか、どのような援助や配慮を受けているのか、一時的ではなく安定して勤務を継続できているのかなど、実際の働き方を見ることが重要です。
就労と障害年金の関係については、「働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイント」で詳しく解説しています。
普段の診察から生活状況を伝えておきましょう
診断書を作成するのは医師ですが、主治医がご本人様の日常生活をすべて見ているわけではありません。
診察では、病状や服薬についての話が中心となり、食事、入浴、掃除、金銭管理、ご家族から受けている援助、仕事から帰った後の状態などまでは、十分に話していないこともあります。
また、ご本人様にとっては長く続いている状態が「普段どおり」になっており、困っていることとして主治医へ伝えていない場合もあります。
そのため、診断書の作成を依頼する段階だけではなく、普段の診療から、日常生活で何に困っているのか、どのような援助を受けているのかをできるだけ具体的に伝えておくことが大切です。
障害等級に合わせて診断書を書いてもらうということではなく、実際の生活状況を伝えたうえで、医師に医学的な判断をしてもらうことになります。
完成した診断書は内容を確認しましょう
診断書を受け取ったら、初診日や現症日などの基本事項に加えて、日常生活能力や就労状況についても確認しておきましょう。
精神の障害用診断書では、特に、ご家族などが実際に行っていることが、ご本人様だけでできているような記載になっていないか、休職中などの実際の就労状況と大きく異なる記載がないかは確認しておきたいところです。
「日常生活能力の判定」や「日常生活能力の程度」についても、これまで主治医へ伝えてきた生活状況と大きな食い違いがないかを確認します。
客観的な事実に誤りがある場合や、実際の生活状況と大きな食い違いがある場合には、医療機関へ確認することになります。
診断書の依頼先や現症日、書類を準備する順番など、診断書全般については、「障害年金の診断書とは?種類や注意点を解説」もご参照ください。
病歴・就労状況等申立書との整合性も確認します
障害年金の請求では、診断書に加えて「病歴・就労状況等申立書」で、これまでの病歴や生活・就労の状況を説明します。
診断書と申立書は役割が異なるため、同じ文章にそろえる必要はありません。
一方で、初診日、入院や休職の時期、就労状況、生活状況など、同じ事実について不自然な食い違いがないかは確認する必要があります。
診断書では十分に伝わりにくい生活上・就労上の状況については、申立書で具体的に補足していくことも大切です。
まとめ
精神の障害用診断書では、病名や症状だけではなく、日常生活能力、必要な援助、生活環境、就労状況などを含めて障害の状態が確認されます。
現在何とかできていることについても、それがご本人様だけで自発的・継続的に行えているのか、周囲からどのような援助を受けているのかを確認する必要があります。
一人暮らしや就労をしている場合にも、その事実だけで考えるのではなく、実際の生活や働き方を具体的に整理していきましょう。
また、普段の診察から日常生活や就労上の支障を主治医へ伝え、診断書を受け取った後には、実際のご状況との間に大きな食い違いがないか確認しておくことも大切です。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
精神の障害用診断書について、日常生活や就労状況をどのように主治医へ伝えればよいのか、完成した診断書の内容をどのように確認すればよいのかなど、疑問がございましたらお気軽にご相談ください。