双極性障害で障害年金はもらえる?躁うつ病の認定基準と申請のポイント
はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。
双極性障害(躁うつ病)は、障害年金の対象となる精神疾患の一つです。
双極性障害では、気分が高揚して活動的になる躁状態・軽躁状態や、意欲・活動性が大きく低下するうつ状態などがみられます。こうした病状の変動によって、日常生活や仕事に大きな支障が生じる場合には、障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、双極性障害と診断されているだけで受給が決まるわけではありません。症状や治療の経過、日常生活への影響、就労状況などを総合して判断されます。
この記事では、双極性障害による障害年金の認定基準と、申請を検討する際に確認しておきたいポイントについて、実務の視点も交えて解説します。
目次
双極性障害で障害年金を受け取れるのは、どのような場合?
双極性障害は、障害年金の認定基準では、うつ病と同じ「気分(感情)障害」に分類されています。
双極性障害にはⅠ型・Ⅱ型などの分類がありますが、Ⅰ型だから必ず重い等級になる、Ⅱ型だから障害年金の対象になりにくい、といったものではありません。
実際の症状やその経過、日常生活や仕事にどのような支障が生じているのかを踏まえて判断されます。
障害等級の大まかな目安は、次のとおりです。
| 障害等級 | 障害状態の目安 |
|---|---|
| 1級 | 病状が重く、日常生活において常時の援助が必要となるような状態 |
| 2級 | 病状によって日常生活が著しい制限を受ける状態 |
| 3級 | 病状によって労働に制限が生じる状態 |
これは認定基準を簡潔にまとめたものであり、実際の等級は診断書の内容や日常生活・就労状況などを踏まえて総合的に判断されます。
また、障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級が対象です。初診日当時に加入していた年金制度によって、対象となる等級が異なります。
参考:日本年金機構「障害認定基準 第8節/精神の障害」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-8.pdf
躁状態・軽躁状態・うつ状態と、日常生活への影響
双極性障害では、病状の変動によって日常生活の様子が大きく変わることがあります。
うつ状態では、強い気分の落ち込みや意欲・活動性の低下、思考力・集中力の低下、倦怠感などが生じます。
実際のご相談でも、日中の多くを横になって過ごし、食事や入浴、掃除、買い物などを自分で行うことが難しくなっている方がいらっしゃいます。
一方、躁状態・軽躁状態では、気分の高揚や活動性の増加、睡眠時間の減少、多弁、衝動的な行動などがみられることがあります。
活動的な時期でも、適切に生活できているとは限りません
実務上、注意したいのは、活動性が高まっていることと、日常生活を適切に維持できていることは同じではないという点です。
例えば、躁状態では外出や買い物を積極的に行っていても、衝動的な支出が増え、金銭管理が難しくなることがあります。実際のご相談でも、浪費や衝動買いが繰り返され、生活費の管理に大きな問題が生じていた方がいらっしゃいます。
また、易怒性や衝動的な言動によって、家族や周囲の方との関係に問題が生じる場合もあります。
こうした場合には、外出や買い物ができるという事実だけでなく、その行動によって生活上の問題が生じていないか、周囲の援助を必要としていないかなども確認します。
家族等の援助によって生活が成り立っている場合もあります
実際のご相談では、ご家族が食事の準備や家事を担い、金銭管理などについても継続的に援助しているケースがあります。
病状が悪化した際には家族のもとで療養したり、訪問看護を利用しながら生活したりしていた方もいらっしゃいました。
一見すると日常生活を送れているようでも、周囲の援助があることで生活が成り立っている場合には、その援助の内容を確認することが大切です。
一方、十分な援助を受けられず、食事や清潔保持、金銭管理などができないままになっている場合もあります。
休職中・働いている場合は、どう考える?
双極性障害では、病状の変動によって仕事を継続することが難しくなる場合があります。
うつ状態で意欲や集中力が低下して欠勤・休職に至ったり、躁状態で活動的に働いていても、その後の病状の変化によって勤務を続けられなくなったりすることがあります。
障害年金では、働いているという事実だけで、直ちに対象外となるわけではありません。
一方、精神疾患のある方の場合、一般雇用でフルタイム勤務を長期間安定して継続していると、実務上、特に2級の認定は厳しくなる傾向があります。
そのため、勤務時間や仕事内容だけでなく、実際の出勤状況や休職歴、職場で受けている配慮や援助なども重要な判断材料となります。
就職活動ができたことと、実際に働けたことは異なります
実際に弊所で対応した事例では、躁状態で活動性が高まり、求人へ応募して内定を得たものの、その後うつ状態となり、入社前に辞退した方がいらっしゃいます。
この案件では、診断書の就労に関する記載と実際の経過を照合する必要があり、内定を得たことと、実際に就労したことを区別して申立書に整理しました。
この方は双極性障害のほかにも傷病が併存する事例ですが、その後、障害基礎年金2級の認定に至っています。もっとも、認定結果は個別の障害状態や生活・就労状況によって異なります。
また、弊所では、いったん再就職しても休職や退職を繰り返していた方や、仕事量を調整しながら働いていたものの、病状の悪化によって就労を続けられなくなった方のご相談も受けています。
一時的に働けたという事実だけでなく、どの程度安定して勤務できていたのか、その後どのような経過をたどったのかを確認することが大切です。
就労と障害年金の関係については、「働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイント」でも詳しく解説しています。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html
双極性障害の初診日は、いつになる?
双極性障害で障害年金を請求する際には、初診日と、当時の年金加入状況・保険料の納付要件を確認します。
実際のご相談では、最初から双極性障害と診断されているとは限りません。
初めて精神科や心療内科を受診した際には、うつ病などと診断され、その後、躁状態・軽躁状態が確認されて双極性障害と診断されることがあります。
弊所でも、長年うつ病として治療を受けていた方が、その後、双極性障害と診断された案件を扱っています。
このような場合、双極性障害と診断された日が初診日になるとは限らず、当初のうつ病での受診日が初診日となることが多くあります。
また、適応障害や不安症状など、別の診断名や症状で治療が始まっている場合もあります。
そのため、現在の診断名だけでなく、最初にどのような症状で受診し、その後の診断や治療がどのように変わってきたのかを確認する必要があります。
初診から長い年月が経過している場合には、当時の診療記録の有無や、後に受診した医療機関の記録に残る受診歴なども確認していきます。
なお、過去の精神科受診後、長期間にわたって治療を受けず、通常の社会生活や就労を継続していた場合には、社会的治癒の考え方も含めて、初診日の取扱いを個別に検討することがあります。
初診日の考え方や証明方法については、「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」をご参照ください。
障害認定日頃と現在の状態、請求時期を分けて考えます
障害年金の障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。
障害認定日頃に障害等級に該当する状態であった場合には、障害認定日による請求を検討します。
一方、その時点では該当せず、その後、病状が悪化して障害等級に該当するようになった場合には、事後重症請求を検討することになります。
双極性障害では、障害認定日頃と現在とで、病状や生活・就労状況が大きく異なることがあります。
例えば、認定日頃には仕事を続けていたものの、その後、休職や退職を繰り返して現在は働けなくなっている場合があります。また、認定日頃には重いうつ状態で生活全般に援助を必要としていたケースもあります。
弊所では、まず現在の病状や日常生活・就労状況から、今後の分について障害年金の請求を検討できるか確認します。
そのうえで、過去にさかのぼる請求を検討する場合には、障害認定日頃の状態や、当時の診療記録をもとに医師に診断書を作成していただけるかどうかなどを確認していきます。
就職・復職した直後の請求は慎重に検討します
双極性障害では、就職や復職に至っても、その後の病状の変化によって短期間で勤務を続けられなくなる場合があります。
そのため、弊所では就労開始直後の状況だけで判断せず、これまでの病状や治療の経過、休職・退職歴、現在の生活・就労状況などを踏まえ、請求時期を慎重に検討しています。
ただし、就職・復職した場合に、一律に請求を先延ばしにするということではありません。
事後重症請求では、支給が認められた場合、原則として請求月の翌月分からの支給となるため、請求を遅らせることで受給開始時期も遅くなります。
過去にさかのぼる請求については、「障害年金は過去にさかのぼって受給できる?遡及請求の仕組み」でも詳しく解説しています。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
日頃の診療で生活状況を伝え、請求書類を準備します
双極性障害による障害年金の請求では、主治医に作成していただく精神の障害用診断書が重要な資料となります。
双極性障害の場合、診察を受けた日の状態と、日常生活で大きな困難が生じていた時期の状態が異なることもあります。
例えば、うつ状態でほとんど外出できなかったことや、躁状態で金銭管理や対人関係に問題が生じたことなどが、普段の診察では十分に伝わっていない場合があります。
そのため、病状の変動や、それに伴って生じた日常生活・就労上の困難について、日頃の診療の中で主治医に伝えておくことが大切です。
診断書は、そうした診療経過も踏まえ、医師が医学的に判断して作成するものです。
一方、弊所では、必要に応じてご本人様やご家族様から生活状況や就労状況を詳しく伺い、事実関係を整理した参考資料を作成することがあります。
その際には、「浪費がある」「仕事が続かない」といった説明にとどめず、金銭管理にどのような支障が生じていたのか、病状の変化によって勤務を継続できなくなった経過などを確認します。
病歴・就労状況等申立書では、各時期の症状や生活状況、家族等の援助、実際の勤務歴を時系列で整理します。また、完成した診断書と受診状況等証明書、申立書に不自然な食い違いがないかを確認し、必要に応じて医療機関へ事実関係を確認します。
診断書の各項目については、「障害年金の精神の診断書とは?日常生活能力や就労状況のポイント」で、申立書の作成については「障害年金の病歴・就労状況等申立書とは?書き方・作成のポイント」で詳しく解説しています。
参考:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html
まとめ
双極性障害は障害年金の対象となる精神疾患ですが、診断名だけで受給が決まるわけではありません。
躁状態・軽躁状態とうつ状態などの病状の変動によって、日常生活や仕事にどのような支障が生じ、どの程度の援助を必要としているのかが重要になります。
また、一時的に就職や復職ができたという事実だけでなく、実際の勤務の安定性や、これまでの病状・就労の経過も確認する必要があります。
病状や日常生活・就労の実態、これまでの受診歴を丁寧に整理し、適切な請求方法や時期を検討していくことが大切です。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
双極性障害による障害年金の請求について、受給の可能性やお手続きにお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。