障害厚生年金3級はどんな人が対象?認定基準・働きながらの受給・年金額
はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。
「障害厚生年金3級は、働いている人が受け取る年金なのでしょうか」
障害年金のご相談では、2級と3級の違いや、仕事を続けながら受給できるのかといったご質問をいただくことがあります。
障害厚生年金3級は、「働いている人が受け取る等級」という意味ではありません。
人工関節や心臓ペースメーカーのように、原則として3級とされるものがある一方、精神疾患などでは、症状や日常生活への影響、就労状況などから障害の程度が総合的に判断されます。
また、3級が認定された場合でも、傷病手当金や児童扶養手当との調整が必要となることがあります。
この記事では、障害厚生年金3級の対象となる方や認定基準、働きながら受給できる場合、年金額と他の給付との関係について、実務上の注意点も交えて解説します。
目次
障害厚生年金3級は、どんな人が対象になる?
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。
障害基礎年金は1級・2級が対象ですが、障害厚生年金には1級・2級に加えて3級が設けられています。
障害厚生年金3級を受給するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
- 障害の原因となった病気やけがの初診日に、ご本人様自身が厚生年金に加入していたこと
- 所定の保険料納付要件を満たしていること
- 障害認定日または請求時点で、障害厚生年金3級に該当する障害状態にあること
ここで特に注意したいのが、配偶者様の扶養に入っていることと、ご本人様自身が厚生年金に加入していることは異なるという点です。
例えば、夫が会社員で厚生年金に加入していても、その扶養に入っている妻まで厚生年金に加入しているわけではありません。
妻が国民年金の第3号被保険者であった期間に初診日がある場合は、原則として障害基礎年金の対象となります。障害基礎年金には3級がないため、1級または2級に該当するかを検討することになります。
一方、現在は退職して配偶者様の扶養に入っていても、初診日当時はご本人様が勤務先を通じて厚生年金に加入していたのであれば、障害厚生年金3級を検討できます。
現在の勤務状況ではなく、原則として初診日時点の年金加入状況が重要です。
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
障害の種類によって、等級の判断方法は異なります
障害厚生年金3級の認定では、障害の種類によって判断方法が異なります。
原則的な等級が示されている場合
障害年金の認定基準には、特定の医療処置や障害の状態について、原則的な等級が示されているものがあります。
代表的な例は次のとおりです。
| 障害の状態 | 原則的な等級 |
|---|---|
| 股関節・膝関節など、上肢・下肢の3大関節への人工関節・人工骨頭の挿入置換 | 3級 |
| 心臓ペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)の装着 | 3級 |
| 人工透析療法を受けている場合 | 2級 |
これらは、一定の医学的な状態について、認定基準上の取扱いが示されている例です。
ただし、原則3級とされる場合でも、ほかの障害の状態などによっては、さらに上位の等級に該当することがあります。
また、人工関節やペースメーカーなどの場合には、初診日から1年6か月以内に挿入・装着したとき、その日が障害認定日となる取扱いもあります。
いずれも、所定の医療処置を受けたというだけで、初診日や保険料納付要件を問わず年金が支給されるわけではありません。
障害の状態から総合的に判断する場合
一方、うつ病や双極性障害、統合失調症などの精神疾患では、病名や治療内容だけで一定の等級が決まるわけではありません。
また、脳梗塞・脳出血による麻痺などの肢体の機能障害や、さまざまな内部疾患についても、障害の程度を個別に評価する必要があります。
例えば、同じ病気でも、日常生活のほとんどに援助が必要な方もいれば、身の回りのことはある程度できても、仕事を続けることが難しい方もいらっしゃいます。
このような場合には、診断書や検査結果、日常生活への影響、必要な援助などを踏まえて、該当する等級が判断されます。
つまり、障害厚生年金3級は、特定の医療処置などによって原則的に該当する場合もあれば、障害の程度を総合的に評価した結果として認定される場合もあるということです。
参考:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
特に精神疾患では、2級と3級を単純に線引きできません
障害年金では、病気や障害による日常生活や仕事への制限などを、障害の種類ごとの認定基準に照らして判断します。
ただし、特に精神疾患では、「日常生活に支障があれば2級、仕事に支障があれば3級」と単純に分けることはできません。
実際に、国が定める「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では、診断書の日常生活能力の評価を組み合わせた等級の目安に、「2級又は3級」という区分が設けられています。
これは、同じ日常生活能力の評価であっても、ほかの事情によって認定される等級が異なる場合があることを示しています。
精神疾患の障害年金では、食事や身の回りのこと、金銭管理、通院・服薬、対人関係などの日常生活能力が重要な判断材料となります。
そのうえで、病状の経過、家族などからの援助、生活環境、実際の就労状況なども考慮されます。
働いていないから2級になるわけではなく、働いているから3級になるわけでもありません。
精神疾患については、診断書の一部の数字や就労の有無だけで等級を予測するのではなく、障害状態を総合的に確認することが大切です。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
働いていても障害厚生年金3級は受給できる?
障害厚生年金3級は、働いている方でも受給できる場合があります。
ただし、働いていれば3級に該当するというものではありません。特に精神疾患では、実際の就労状況が障害の程度を判断するうえで重要になります。
例えば、うつ病や双極性障害などの気分障害で、一般雇用によるフルタイム勤務を長期間安定して継続している場合には、実務上、2級の認定は難しくなる傾向があります。
このような場合には、実際の障害状態によっては、3級に該当するかどうかが主な検討事項となり、3級にも該当しないと判断されることがあります。
ただし、これは一般雇用で働いている方について、2級の可能性を一律に否定するものではありません。
同じフルタイム勤務でも、次のような事情によって判断が異なることがあります。
- 欠勤や早退が多く、安定した勤務が難しい
- 休職と復職を繰り返している
- 仕事内容や勤務時間について大きな配慮を受けている
- 周囲の援助がなければ業務を継続できない
- 仕事を終えた後に著しく疲弊し、日常生活に大きな支障が生じている
また、障害者雇用だから認定されやすい、短時間勤務だから必ず認定されるといったものでもありません。
弊所で対応した事例では、うつ病とASD・ADHDが併存し、一般雇用でフルタイム勤務をしていた方について、障害厚生年金3級の支給が決定したことがあります。
この方は、診断書の日常生活能力の評価でも、複数の項目について助言や指導を必要とする状態でした。
このように、実際に働いている方でも3級が認定される場合はありますが、就労していること自体が認定の理由となるわけではありません。
就労と障害年金の関係については、働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイントでも詳しく解説しています。
障害厚生年金3級の年金額はいくら?
障害厚生年金3級の年金額は、原則として厚生年金の加入期間や加入中の報酬などに応じた「報酬比例の年金額」によって計算されます。
ただし、3級には最低保障額が設けられています。
令和8年度の障害厚生年金3級の最低保障額は、年635,500円で、月額に換算すると約5万3,000円です。
これは昭和31年4月2日以後に生まれた方の金額で、昭和31年4月1日以前に生まれた方は年633,700円となります。
報酬比例で計算した年金額が最低保障額より低い場合でも、最低保障額まで引き上げられる仕組みです。
なお、月額約5万3,000円というのは、年金額を12か月で割った目安です。実際の年金は、原則として偶数月に前2か月分がまとめて振り込まれます。
また、他の手当との調整によって、家計全体の受取額がそのまま増えるとは限りません。
年金額の計算では、原則として障害認定日の属する月までの厚生年金加入期間を用い、300か月に満たない場合は300か月とみなして計算します。
ここで、2級との違いにも注意が必要です。
障害厚生年金1級・2級では、原則として障害基礎年金も併せて支給されます。
一方、障害厚生年金3級は、障害厚生年金のみの支給となり、障害基礎年金は併せて支給されません。
また、3級には配偶者様の加給年金額や子の加算額もありません。
そのため、同じ障害厚生年金であっても、2級と3級では年金の構成や受給額に大きな違いが生じることがあります。
なお、障害厚生年金3級には、給与収入が一定額を超えたという理由だけで年金が支給停止となる、一律の所得制限はありません。
ただし、特に精神疾患では、実際の就労状況が障害の程度を判断する際に考慮されることがあります。
年金額に対する所得制限と、障害状態の審査における就労状況の評価は、分けて考える必要があります。
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額(令和8年度)」
傷病手当金・児童扶養手当との調整に注意が必要です
障害厚生年金3級が認定されても、他の給付を受給している場合には、支給額の調整が必要になることがあります。
特に、傷病手当金や児童扶養手当を受給している方は、請求前に確認しておきたい事項です。
傷病手当金を受給している場合
傷病手当金と同じ病気やけが、またはそれが原因で生じた病気について障害厚生年金を受給し、支給対象期間が重なる場合には、傷病手当金が調整されます。
この取扱いは、障害厚生年金3級にも適用されます。
詳しい調整方法や、過去にさかのぼって年金が決定した場合の返還については、傷病手当金と障害年金は両方もらえる?支給調整・返還・請求時期を解説をご参照ください。
児童扶養手当を受給している場合
ひとり親家庭などで児童扶養手当を受給している方は、障害厚生年金3級との調整にも注意が必要です。
障害厚生年金3級のみを受給する場合には、原則として、年金を月額に換算した金額と、所得などに応じて算定される児童扶養手当の月額を比較して調整します。
障害厚生年金の額が児童扶養手当額を上回る場合には、児童扶養手当が全額支給停止となることがあります。
一方、児童扶養手当額の方が多い場合には、その差額が支給されることがあります。
ここで注意したいのが、障害基礎年金を受給する場合との違いです。
障害基礎年金1級・2級を受給している方については、原則として障害基礎年金の子の加算部分と児童扶養手当額を比較する取扱いがあります。
しかし、障害厚生年金3級のみの場合には、この子の加算部分だけで比較する取扱いにはなりません。
なお、障害基礎年金を受給している方は、児童扶養手当の所得判定に、障害年金などの非課税の公的年金も含める取扱いがあります。3級のみを受給する場合とは、所得判定についても取扱いが異なります。
そのため、障害厚生年金3級が決定しても、児童扶養手当との調整によって、家計全体の受取額が想定したほど増えない場合があります。
また、障害厚生年金が過去にさかのぼって決定した場合には、すでに支給された児童扶養手当について、再計算や返還が必要になることがあります。
児童扶養手当を受給している方は、障害年金の決定後、速やかにお住まいの自治体へ届け出ることが大切です。
参考:こども家庭庁「児童扶養手当について」
参考:こども家庭庁「児童扶養手当法の改正Q&A(障害基礎年金等と合わせて受給する場合)」
初診日と障害認定日、請求時期も重要です
障害厚生年金3級を検討する際には、障害の程度だけでなく、初診日や請求する時期も重要になります。
例えば、現在は厚生年金に加入して働いていても、障害の原因となった病気について初めて受診した日が国民年金加入中であれば、原則として障害厚生年金3級の対象にはなりません。
また、障害年金の障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。ただし、人工関節の挿入置換など、通常より早い時期が障害認定日となる例外もあります。
請求方法は、大きく次の2つに分かれます。
- 障害認定日による請求: 障害認定日時点ですでに所定の障害状態に該当していた場合に、その時点の状態によって請求する方法
- 事後重症による請求: 障害認定日には該当せず、その後に障害状態が重くなり、所定の等級に該当した場合に請求する方法
障害認定日に3級以上に該当していた場合には、過去にさかのぼる請求を検討できることがあります。ただし、過去の年金について実際に受け取れるのは、時効により原則5年分が限度です。
一方、事後重症請求では、支給が認められた場合、原則として請求した月の翌月分から年金が支給されます。
ここで重要なのは、同じ方の同じ傷病であっても、障害認定日当時と現在とでは、障害の程度や認定結果が異なる場合があるという点です。
例えば、次のようなケースがあります。
- 障害認定日当時は3級、現在は2級: 過去の対象期間については3級の年金が認められ、現在の障害状態については、所定の手続きにより2級への増額改定が認められる場合があります。
- 障害認定日当時は非該当、現在は3級: 障害認定日を基準とした過去分の年金は認められなくても、事後重症請求により、請求月の翌月分から3級の年金が支給される場合があります。
このように、過去の障害状態と現在の障害状態を分けて審査した結果、異なる等級や支給結果となるケースは、実際の請求実務でも見受けられます。
障害認定日当時と現在で障害の程度が異なる場合は、それぞれの時期の診断書に加え、額改定などの手続きが必要か、いつの分から年金額が変わるかも確認することが大切です。
事後重症請求は、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。
特に精神疾患では、障害認定日当時は就労を継続していたものの、その後に休職や退職へ至り、障害状態が変化している場合があります。
また、過去にさかのぼって請求する場合には、当時の障害状態を確認できる診断書を作成してもらえるかという問題もあります。
初診日や障害認定日、診断書を作成できる時期などを整理してから請求方法を検討することが大切です。
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
参考:日本年金機構「障害の程度が変わったとき」
まとめ
障害厚生年金3級は、障害基礎年金にはない等級ですが、働いている方が受け取るための年金という意味ではありません。
人工関節やペースメーカーのように原則的な等級が示されている場合もあれば、精神疾患などのように、日常生活能力や就労状況などから総合的に判断される場合もあります。
特に精神疾患では、2級と3級を単純に線引きすることは難しく、働いているかどうかだけで等級を判断することもできません。
一方、うつ病や双極性障害などの気分障害で、一般雇用による安定した就労を長期間続けている場合には、実務上、2級の認定は難しく、3級に該当するかどうかを慎重に検討するケースもあります。
また、障害厚生年金3級では、初診日にご本人様自身が厚生年金に加入していたかどうかが重要です。傷病手当金や児童扶養手当を受給している方は、年金が決定した場合の支給調整についても確認しておく必要があります。
3級に該当する可能性だけでなく、実際の障害状態や請求時期、他の給付との関係まで整理することが大切です。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
障害厚生年金3級の請求について、ご自身の障害状態や就労状況から判断にお困りの方は、お気軽にご相談ください。