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脳梗塞・脳出血で障害年金はもらえる?後遺症の認定基準と申請時期

はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。

脳梗塞・脳出血の後遺症で、障害年金を受けられる場合があります。 手足の麻痺、失語症、飲み込みの障害などにより、日常生活や仕事に一定以上の制限があり、初診日や保険料納付などの要件を満たすことが必要です。

「片麻痺が残ったら何級になるのか」「発症から6か月たてば申請できるのか」「診断書は何科に頼めばよいのか」と迷われることもあると思います。

脳梗塞・脳出血では、残っている障害の種類と程度を確認し、申請する時期に合った書類をそろえることが大切です。この記事では、後遺症の認定基準と、申請を検討するときの確認事項を解説します。

脳梗塞・脳出血は、後遺症の状態によって判断されます

障害年金は、病名や入院期間だけで決まる制度ではありません。同じ脳梗塞・脳出血でも、手足の動かしにくさが中心の方、言葉でのやり取りが難しい方、複数の障害が重なっている方では、確認する内容が異なります。

まずは、次の3点を確認します。

  • 障害の原因となった病気について、初めて医師の診療を受けた日(初診日)
  • 初診日に加入していた年金制度と、保険料の納付状況
  • 障害認定日や請求時点における、後遺症の程度

障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級が対象です。現在会社員かどうかではなく、原則として初診日に加入していた制度から請求する年金を確認します。退職後に申請する場合でも、初診日が厚生年金加入中であれば、障害厚生年金を検討できます。

参考:日本年金機構「障害年金」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-01.html

手足の麻痺は、日常生活の動作まで確認します

脳梗塞・脳出血による麻痺が上肢と下肢など広い範囲に及ぶ場合は、原則として「肢体の機能の障害」の基準で認定されます。関節の動く範囲や筋力に加え、細かな動作、動作の速さ、続けて動ける力なども考慮されます。

そのため、「片麻痺がある」「一定の距離を歩けない」という情報だけでは、等級を判断できません。歩行以外にも、食事、着替え、排泄、立ち上がりなどがどの程度できるかを確認する必要があります。

例えば、次のような場面を具体的に整理します。

  • 食事の際に、食器を支えたり、スプーンを使ったりできるか
  • ボタンを留める、衣服を上げ下げする動作に手助けが必要か
  • トイレの後始末や入浴を、一人で安全に行えるか
  • 屋内と屋外で歩き方に違いがあるか、杖や装具を使っているか
  • 階段で手すりや介助が必要か、途中で休まなければならないか

一度できた動作でも、日常的には時間がかかりすぎる、疲れて続けられない、転倒を避けるため見守りが必要ということがあります。「できる・できない」だけで終わらせず、どのような条件ならできるのかを伝えることが大切です。

肢体の機能の障害では、大まかに、1級は日常生活の用を自分で済ませられない程度、2級は日常生活に著しい制限がある程度、3級は労働に著しい制限がある程度が基準となります。実際の認定では、該当する部位の基準や診断書の内容を踏まえて判断されます。

例えば、片麻痺といっても、手足がほとんど動かせない重い状態から、動かしにくさは残るものの日常生活の動作はおおむね自立している状態まで、その程度には幅があります。障害基礎年金2級に該当するかどうかは、麻痺の程度や日常生活への影響によって判断されます。 食事、更衣、排泄、移動などがおおむね自立している場合には、実務上、2級の認定が難しいこともあります。

一方、初診日に厚生年金へ加入していた場合には、日常生活の動作がある程度できていても、労働に著しい制限があるときなどは、障害厚生年金3級の可能性も含めて検討します。

参考:日本年金機構「障害認定基準 第7節 肢体の障害 第4 肢体の機能の障害」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-7-4.pdf

身体障害者手帳と障害年金は別の制度です。手帳の等級を、そのまま年金の等級に置き換えることはできません。詳しくは、障害者手帳と障害年金の違いもご参照ください。

失語症や飲み込みの障害も、確認が必要です

言葉でのやり取りが難しい場合

失語症や構音障害は、「音声又は言語機能の障害」の認定対象です。発音だけでなく、話して伝える力や、相手の話を聞いて理解する力も確認されます。

短い挨拶ができても、用件の説明や電話でのやり取りが難しいことがあります。ご家族様が先回りして内容を補っている場合には、その援助も含めて主治医に伝えましょう。失語症では、話す・聞くことに比べて読み書きの障害が重い場合、その状態も考慮されます。

参考:日本年金機構「障害認定基準 第6節 音声又は言語機能の障害」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-6.pdf

また、脳梗塞・脳出血では、言葉の障害に加えて、記憶や注意、物事を順序立てて進める力などにも障害が残ることがあります。こうした高次脳機能障害が手足の麻痺などと併存する場合には、それぞれの後遺症が日常生活や仕事に及ぼしている影響も確認する必要があります。

詳しくは、高次脳機能障害の障害年金をご参照ください。

食べることや飲み込むことが難しい場合

そしゃく・嚥下機能の障害では、口から食べられるか、どのような食事を摂取できるか、栄養状態は保たれているかなどを確認します。例えば、全粥や軟らかい食事に限られるのか、とろみが必要か、経管栄養を併用しているか、食事にどの程度の時間がかかるかといった具体的な状況が重要です。

ただし、「むせることがある」「食事を工夫している」というだけで等級が決まるわけではありません。また、特定の食事形態だけで判断されるものでもありません。検査や診察で確認された障害の程度と、実際の食事の状況を合わせて確認します。

参考:日本年金機構「障害認定基準 第5節 そしゃく・嚥下機能の障害」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-5.pdf

申請時期は、原則1年6か月と症状固定の扱いを確認します

障害の程度を判断する「障害認定日」は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。その前に傷病が治った場合や、症状が固定したと認められる場合には、その日となることがあります。

参考:日本年金機構「障害認定日」

https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/sagyo/ninteibi.html

6か月経過しただけで、認定日になるわけではありません

脳梗塞・脳出血によって手足の麻痺などの機能障害が残った場合、初診日から6か月を経過した日以後に、医学的にそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められるときには、1年6か月より前を障害認定日として扱うことがあります。

これは「発症から6か月たてば、誰でも申請できる」という意味ではありません。退院した日やリハビリ病院から転院した日が、そのまま症状固定日になるわけでもありません。主治医の医学的な見解と治療経過を確認する必要があります。

一方、高次脳機能障害については、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となります。

そのため、手足の麻痺について6か月経過後の早期認定が認められる場合でも、高次脳機能障害まで同じ時点で認定できるとは限りません。両方の障害が残っている場合は、それぞれの障害について、どの時点の診断書が必要かを確認してから依頼することが大切です。

参考:日本年金機構「障害認定基準 第9節 神経系統の障害」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-9.pdf

障害認定日に基準に該当していた場合は、その時点の状態による障害認定日請求を検討します。後からさかのぼって請求する場合もありますが、受け取れる過去の年金は、時効により原則5年分が限度となります。

一方、障害認定日には基準に該当せず、その後に重くなった場合は、事後重症による請求を検討します。事後重症は請求した月の翌月分からの支給となります。

事後重症請求は、原則として65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。

状態が重くなったまま請求を先延ばしにしないことも大切です。

参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html

初診日と診断書は、受診経過と後遺症を整理してから確認します

初診日は、現在の病院を初めて受診した日や、障害者手帳を申請した日ではありません。突然発症して救急搬送された場合は、そのときの受診日が初診日となることが多くあります。

ただし、脳梗塞を発症する以前に、心房細動などの心疾患について治療を受けていた場合には、心疾患と脳梗塞との相当因果関係を確認する必要があります。

相当因果関係が認められる場合には、脳梗塞を発症した日ではなく、それ以前の心疾患について初めて受診した日が、障害年金の初診日となることがあります。

一方、高血圧などの受診歴があるという理由だけで、必ずその日まで初診日がさかのぼるわけではありません。また、脳血管障害が再発した場合にも、過去の受診との関係を確認します。いずれも、それぞれの傷病や治療経過を踏まえた個別の判断が必要です。

ご相談では、病名が確定した日だけでなく、最初にどのような症状で受診したかを伺い、医療機関の記録と年金の加入記録を照らし合わせることが重要です。

参考:日本年金機構「かけはし第48号(初診日の考え方)」

https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/20180104.html

後遺症に合った診断書の様式を選びます

障害年金の診断書は、病名ごとではなく、障害の種類に応じて様式が分かれています。

  • 手足の麻痺など:肢体の障害用(様式第120号の3)
  • 失語症、そしゃく・嚥下機能の障害など:聴覚・鼻腔機能・平衡感覚・そしゃく・嚥下・言語機能の障害用(様式第120号の2)
  • 高次脳機能障害:精神の障害用(様式第120号の4)

複数の後遺症がある場合には、2種類以上の診断書が必要になることがあります。ただし、診断書を増やせば等級が上がるわけではありません。併合認定や総合的な評価には所定のルールがあり、単純な等級の足し算では判断できません。

参考:日本年金機構「年金事務所との『かけはし』第55号(診断書の種類)」

https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/20190301.files/20190301.pdf

診断書を依頼する前に、必要な様式と、記載してもらう障害状態の日付を確認しましょう。

依頼先は、脳神経外科、脳神経内科、リハビリテーション科など、実際に後遺症を診療しており、必要な時期の障害状態を適切に記載できる医師となります。診療科の名称だけで、診断書を作成できるかどうかが決まるわけではありません。

特に、障害認定日までさかのぼって請求する場合には、当時の障害状態を記載した診断書が必要になります。現在の主治医が診断書を作成できても、過去の障害状態まで記載できるとは限りません。

そのため、急性期の病院や回復期のリハビリテーション病院などで、必要な時期の診断書を作成してもらえるか確認することが重要です。

病歴・就労状況等申立書では、発症から入院・転院、退院後の生活、休職や復職までを順に整理します。復職している場合も、勤務時間を短くした、作業を変更した、通勤や職場で援助を受けているなど、実際の働き方を記載します。

ご本人様が経過を説明しにくい場合は、ご家族様が診察や相談に同席し、退院時の資料やリハビリの記録、日常の介助内容を一緒に確認することも役立ちます。詳しくは、病歴・就労状況等申立書の書き方をご参照ください。

まとめ

脳梗塞・脳出血の障害年金では、病名だけでなく、残っている後遺症と生活・仕事への影響を確認することが大切です。歩行の状態だけに注目せず、手の動作、会話、食事なども含めて整理しましょう。

障害認定日は原則として初診日から1年6か月ですが、片麻痺などの機能障害については、医学的に症状固定と認められる場合、初診日から6か月経過後に認定されることがあります。

初診日、必要な診断書、記載する時点を先に確認することで、準備の行き違いを防ぎやすくなります。


少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。

脳梗塞・脳出血の後遺症による障害年金について、申請時期や書類の準備にお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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