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精神障害の病歴・就労状況等申立書の書き方|いつから何を書く?

はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。

「病歴・就労状況等申立書には、いつからのことを書けばよいのでしょうか」

「子どもの頃のことや、学校・仕事での出来事も書く必要がありますか」

精神の障害による障害年金の請求では、病歴・就労状況等申立書をどのように作成すればよいのか、悩まれる方も少なくありません。

特に知的障害や発達障害では、出生時からの経過を記載する取扱いがあるため、長年の出来事をどこまで思い出し、何を書けばよいのか迷うこともあると思います。

ただし、申立書は、これまでの人生で経験した出来事をすべて詳しく書くための書類ではありません。

基本的には、障害年金の請求対象となる病気や障害、その症状に関連して、日常生活や学校、仕事などでどのような困難が生じてきたのかを、時期ごとに整理して記載します。

この記事では、うつ病・双極性障害・統合失調症・知的障害・発達障害などについて、申立書をいつから書くのか、期間をどのように区切るのかという基本的なルールから、具体的な記載方法まで、弊所での申立書作成実務を踏まえて解説します。

なお、本文中の記載例は、実務上確認することのある状況を参考に作成した説明用の例であり、特定の方の申立書をそのまま転載したものではありません。

目次

申立書には、何を書けばよい?

病歴・就労状況等申立書は、障害年金の請求にあたり、発病から現在までの受診歴や治療経過、日常生活・就労状況などを説明する書類です。

診断書が医師の立場から病状や障害状態を記載するものであるのに対し、申立書では、ご本人様が実際に経験してきたことや、生活・仕事に生じた支障を伝えます。

ここで大切なのは、請求する病気や症状との関係を意識して、書く内容を整理することです。

例えば、職場の人間関係がきっかけとなってうつ病を発症した場合、職場で起きた出来事を一つひとつ詳しく説明する必要はありません。

その後、不眠や抑うつ、意欲低下などが現れ、仕事を続けることが難しくなり、欠勤や休職に至ったのであれば、その経過を中心に記載します。

学校生活や家庭環境についても同様です。発病や症状の悪化に関係する出来事には必要な範囲で触れますが、関係の薄い出来事まで詳しく書き連ねる必要はありません。

一方、医療機関名や通院期間だけを並べても、病気によって実際にどのような困難が生じていたのかは十分に伝わりません。

その時期にどのような症状があり、日常生活や仕事にどのような影響があったのかを、受診歴とあわせて伝えることが大切です。

申立書の基本的な役割については、関連記事「病歴・就労状況等申立書とは?書き方・作成のポイント」でも解説しています。

申立書はいつから書く?病気による違い

病歴・就労状況等申立書は、原則として発病から現在までの経過を記載します。

ただし、どの時期からの経過を整理するかは、請求する傷病によって異なります。

特に知的障害・発達障害と、成人後に発症したうつ病などでは、記載する期間の考え方に違いがあります。

知的障害・発達障害では出生時からの経過を整理します

生来性の知的障害では、出生時からの発育や養育、学校生活、成人後の生活・就労の経過を整理します。

例えば、言葉や運動の発達、集団生活での様子、学習面の困難、特別支援教育の利用、家族や教師から受けていた援助などです。

成人後については、就労状況や日常生活の自立度、ご家族様などからの援助も確認します。

ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害についても、申立書では出生時から現在までの経過を記載する取扱いとなっています。

日本年金機構の実務資料でも、知的障害・発達障害については、出生から就学前、小学校低学年・高学年、中学校、高校など、時期を区切って記載するよう案内されています。

ただし、出生時からの出来事をすべて詳しく書く必要はありません。

例えば、幼少期から忘れ物が多かった、集団行動が苦手だった、予定どおりに行動することが難しかったなど、発達特性に関連する困難を中心に整理します。

また、それによって家族や教師からどのような援助を受けていたのかも重要です。

なお、知的障害と発達障害では、障害年金の初診日の取扱いが異なります。

生来性の知的障害では、発病日・初診日ともに出生日として取り扱われます。

一方、発達障害では、発病日を出生日とする日本年金機構の記載例がありますが、初診日は原則として対象となる症状について初めて医師等の診療を受けた日となります。

そのため、成人後に初めてADHDやASDと診断された場合でも、出生時からの経過を記載することと、制度上の初診日を確認することは別に考える必要があります。

発病日や初診日は、診断書などの医療関係書類との整合性も確認しながら記載します。

参考:日本年金機構「かけはし第52号」(2ページ・出生時からの記載)

参考:日本年金機構「かけはし第68号」(5ページ・発達障害の記載例)

うつ病・双極性障害などは発病した頃から整理します

一方、成人後にうつ病や双極性障害などを発症した場合には、原則として、その病気の症状が現れ始めた頃からの経過を整理します。

例えば、社会人になってから不眠や抑うつが現れ、仕事を続けることが難しくなって精神科を受診したのであれば、その頃からの病状や受診歴、生活・就労状況などを記載します。

幼少期や学生時代に請求する傷病と関連する問題がなければ、子どもの頃からの出来事を機械的に記載する必要はありません。

ただし、以前から同じような症状が続いていた場合や、発達障害などを併存している場合には、より前の時期からの経過を確認することもあります。

また、現在はうつ病と診断されていても、過去に別の病名で受診していた場合などには、その受診が現在の傷病と関係しているかを確認する必要があります。

いつから書くのかは、現在の病名だけでなく、請求する傷病について実際にどのような経過があったのかを踏まえて判断することが大切です。

初診日については、関連記事「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」でも解説しています。

発病から現在までの期間は、どう区切る?

記載を始める時期が分かったら、次に発病から現在までの経過を整理します。

申立書では、原則として、発病から現在までに空白の期間がないように記載します。

まずは初診、転院、入院、通院中断、再受診などの時期を確認すると、期間を整理しやすくなります。

受診していた期間と、受診していなかった期間を分けます

申立書の表面では、受診していた期間と受診していなかった期間を区別して記載します。

受診していた期間には、医療機関名や治療経過、症状、生活・就労状況などを記載します。

受診していなかった期間についても、その理由や当時の症状、生活・仕事の状況を整理します。

例えば、病状が改善したため通院を中断した場合もあれば、体調が悪く、外出すること自体が難しくなって受診できなかった場合もあります。

同じ無受診期間でも、その理由や生活状況は異なります。

また、日本年金機構の記載要領では、1つの期間が5年を超える場合には、3~5年ごとに区切って記載することとされています。

実務上は、受診していた期間を医療機関ごとに整理したうえで、長期間の場合にはさらに区切ります。

その間に就職、休職、退職などの大きな変化があった場合には、その時期の病状や生活・就労状況が分かるように文章をまとめることが大切です。

なお、受診年月日は診察券やお薬手帳、医療機関の記録などで確認し、どうしても分からない部分は、不明な範囲が分かるように記載します。曖昧な記憶を確定した日付として書かないことが大切です。

知的障害などでは、記載を簡素化できる場合があります

出生時からの経過を記載する知的障害や発達障害では、長年の病歴を整理することに負担を感じる方もいらっしゃると思います。

日本年金機構では、令和2年10月から、一定の場合に申立書の病歴欄を簡素化できる取扱いを設けています。

生来性の知的障害では、出生時から現在までの経過を、大きな変化があった時期を中心に一つの欄へまとめることができます。

また、発達障害などでも、20歳前傷病の初診日証明を簡素化する条件を満たす場合には、発病から証明書を発行する医療機関の受診日までの経過を一つの欄にまとめられます。それ以降の経過は通常どおり記載します。

ただし、簡素化する場合も、学校生活や就労、必要な援助などに大きな変化があれば、その内容を残すことが大切です。

例えば、知的障害の方でも、学校卒業後に長年働いていた場合や、20歳頃と現在で生活能力や必要な援助が大きく異なる場合には、その違いが分かるように記載します。

形式上どこまでまとめられるかと、実際の状況を伝えるために何を書く必要があるかは、分けて考えるとよいでしょう。

参考:日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」

それぞれの期間には、何を書けばよい?

期間を区切ったら、それぞれの時期にどのような症状があり、どのような生活を送っていたのかを整理します。

基本的には、受診・治療の経過、症状、日常生活、学校・仕事での状況、ご家族様などからの援助について確認します。

ただし、すべての期間について、これらを一つひとつ詳しく記載する必要はありません。

例えば、発達障害の方の小学校時代であれば、学習面や集団生活での支障、家族や教師から受けていた援助などが中心になります。

成人後にうつ病を発症した方であれば、抑うつ症状が仕事や日常生活に与えた影響、受診を始めた経緯、休職や退職に至った状況などが中心になるでしょう。

また、統合失調症では、幻聴や妄想が強く入院を必要としていた時期と、その後に意欲低下や自発性の乏しさなどが続いている時期とで、記載する内容が異なる場合があります。

双極性障害でも、抑うつ状態と躁状態・軽躁状態によって、生活や仕事への影響が大きく異なることがあります。

そのため、各期間にすべての項目を同じように記載するのではなく、その時期の病状や生活の変化に応じて、必要な内容を整理することが大切です。

何を書けばよいか迷ったときには、請求する病気や症状によって、その時期に何が難しくなっていたのかを考えると整理しやすくなります。

一方、症状が強く日常生活に大きな支障が生じていた時期については、「療養していた」「通院を継続した」という簡単な記述だけでは、実際の状況が十分に伝わらないことがあります。

そのような場合には、生活や仕事への影響を具体的に説明していきます。

日常生活・学校・仕事での困難を具体的に伝える

精神の障害では、外見や短時間の会話だけでは、日常生活や仕事で抱えている困難が分かりにくいことがあります。

申立書では、症状の名称だけでなく、実際に生じていた支障や援助の状況を具体的に伝えることが重要です。

日常生活の支障と家族等の援助をどう書く?

例えば、うつ病の方について、次のような記載を考えてみます。

状況が十分に伝わりにくい記載例

抑うつや意欲低下が続き、日常生活が困難だった。

生活状況を具体化した記載例

抑うつや強い倦怠感が続き、朝起きられず、日中も横になって過ごす時間が長かった。食事は母が用意し、掃除や洗濯、買い物もほとんど母に任せていた。入浴も自分から行うことが難しく、家族から声をかけられても何日も入浴できないことがあった。

後者では、症状が実際の生活にどのような影響を与え、どのような援助を必要としていたのかが具体的に伝わります。

また、「一人で入浴できる」「自分で食事を取れる」といっても、必ずしも日常生活を安定して維持できているとは限りません。

入浴すること自体はできても、声をかけられなければ何日も入浴できない場合があります。

食事も、自分で食べることはできても、家族が用意しなければ食事を抜いてしまう場合があります。

自発的にできるのか、適切な頻度で継続できるのか、誰かの援助を必要としているのかという点まで確認することが大切です。

また、一人暮らしの場合でも、別居の家族等から食事や金銭管理、通院などの援助を受けていることがあります。

反対に、援助を必要としていても、頼れる人がいないために十分な援助を受けられていない場合もあります。

同居・別居という形式だけではなく、実際の生活状況を整理します。

ただし、記載内容は確認できた事実に基づくものです。援助の内容や頻度を推測したり、症状を実際より重く表現したりすることは適切ではありません。

学校生活や働いていた期間は、どこまで書く?

知的障害や発達障害では、学校生活でどのような困難があったのかを確認することがあります。

例えば「忘れ物が多かった」という場合でも、必要な持ち物を自分で管理できず、家族や教師から繰り返し確認してもらっていたという事情があれば、その状況を説明します。

学習面についても、授業についていけなかったことや、課題を期限までに提出できなかったことなど、障害や症状との関係が分かるように整理します。

成人後の就労についても、単に「会社員として勤務していた」「パートで働いていた」と記載するだけでは、実際の勤務状況が十分に伝わらない場合があります。

例えば、次のような記載です。

状況が十分に伝わりにくい記載例

正社員として勤務していたが、体調が悪化して休職した。

勤務の実態を具体化した記載例

正社員として勤務していたが、抑うつや強い倦怠感、集中力低下が続き、仕事を覚えることや指示を理解することが難しかった。残業を控えるなどの配慮を受けていたが、欠勤が増え、帰宅後は疲れ切って家事もできない状態が続いた。症状が改善せず、休職することとなった。

後者では、仕事にどのような支障があり、どのような配慮を受けながら休職に至ったのかが分かります。

また、双極性障害では、躁状態で活動性が高まった時期に求人へ応募し、内定を得たものの、その後の抑うつ状態によって勤務開始前に辞退してしまう場合もあります。

この場合、内定を得たことと、実際に勤務を開始したことは区別する必要があります。

同様に、会社に在籍していても、実際には長期間休職している場合があります。

学校や会社に所属していたという事実だけでなく、その間にどのような支障があり、どの程度の援助や配慮を必要としていたのかを整理することが大切です。

もちろん、実際に安定して通学・勤務できていた期間があれば、そのことも正確に記載します。

就労と障害年金の関係については、関連記事「働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイント」でも解説しています。

障害認定日頃と現在、診断書との関係も確認する

申立書では、発病から現在までの経過に加えて、障害認定日頃と現在の状態を区別して整理することも大切です。

例えば、障害認定日頃は仕事をしていたものの、その後病状が悪化して現在は無職となっている場合があります。

反対に、認定日頃は休職中だったものの、その後に就職や復職をしている場合もあります。

現在の症状が重いからといって、過去の障害認定日頃にも同じ状態であったかのように記載することはできません。

それぞれの時期について、実際の病状や生活・就労状況を整理する必要があります。

申立書の表面と裏面では、記載する内容が異なります

病歴・就労状況等申立書の表面では、発病から現在までの病歴や生活・就労の経過を時系列で記載します。

一方、裏面では、請求方法に応じて障害認定日頃と現在(請求日頃)の就労・日常生活状況を記載します。

事後重症請求では現在の状況を記載します。障害認定日による請求では認定日頃の状況を記載し、認定日と請求日が1年以上離れている場合には、両方の時期の状況を記載する必要があります。

また、裏面には、着替え、洗面、食事、入浴、掃除、買い物などの日常生活動作について、該当する選択肢を記入する欄があります。

これらは精神の障害用診断書の日常生活能力の評価とは異なる項目です。

そのため、診断書の評価を機械的に当てはめるのではなく、申立書の各項目について実際の状態を確認して記入します。

さらに、申立書を作成する過程で、診断書や受診状況等証明書に記載された受診期間、休職時期、就労状況などと食い違いが見つかることもあります。

このような場合には、診断書に合わせて事実と異なる内容を書くのではなく、まず実際の経過を確認する必要があります。

客観的な記載誤りがあれば医療機関へ確認することもありますが、診断書の医学的な評価については主治医の先生の判断を尊重することが大切です。

申立書と診断書は役割の異なる書類です。記載内容の整合性を確認しながら、それぞれの役割に応じて正確に作成することが重要です。

参考:日本年金機構「病歴・就労状況等申立書の提出にあたって」(裏面の記載方法)

まとめ

精神の障害に関する病歴・就労状況等申立書では、請求する傷病によって記載を始める時期が異なります。

生来性の知的障害や発達障害では出生時からの経過を整理する一方、成人後に発症したうつ病などでは、原則として発病した頃からの経過を記載します。

また、受診していた期間と受診していなかった期間を区別し、長期間の場合には適切に期間を区切る必要があります。

ただし、これまでの出来事をすべて詳しく書く必要はありません。

基本となるのは、請求する病気や症状に関連して、日常生活、学校生活、仕事などでどのような困難が生じ、どのような援助を必要としてきたのかを、実際の経過に沿って伝えることです。

まずは受診歴や大きな生活の変化を整理し、それぞれの時期に病気や症状によって生じていた支障を確認していくとよいでしょう。

申立書は、症状を実際より重く見せるための書類ではありません。一方で、実際にあった困難や必要だった援助が、簡単な記述だけで十分に伝わらなくなってしまうことも避けたいところです。

必要な事実を省略しすぎず、関係の薄い出来事を詳しく書きすぎず、病状や生活の実態が正確に伝わるように整理することが大切です。


少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。

うつ病・双極性障害・統合失調症・知的障害・発達障害などによる障害年金の請求で、病歴・就労状況等申立書の作成や、これまでの病歴・就労状況の整理にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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