受診状況等証明書が取れないときは?カルテ破棄・初診日不明への対応
はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。
「昔の病院に問い合わせたところ、カルテが残っていないと言われました」
「最初に受診した病院が分からないのですが、障害年金は申請できますか」
障害年金の請求では、過去の医療機関から「受診状況等証明書」を取得する必要がある場合があります。
しかし、初診日から長い年月が経過していると、カルテが廃棄されていたり、医療機関そのものが廃院していたりすることがあります。
最初の医療機関から受診状況等証明書を取得できなくても、それだけで障害年金の請求を諦める必要があるとは限りません。
ただし、初診日を十分に証明できず、障害年金が認められないリスクが生じることも事実です。
そのため、後の医療機関の記録や当時の受診を裏付ける資料を調べ、可能な限り客観的な根拠を積み重ねることが大切です。
この記事では、カルテの廃棄や初診の医療機関が分からない場合について、弊所での実務経験を踏まえながら、具体的な確認方法と注意点を解説します。
目次
受診状況等証明書が取れなくても障害年金は請求できる?
受診状況等証明書は、障害年金の請求において、障害の原因となった病気やけがの初診日などを確認するための書類です。
通常、最初に受診した医療機関と、障害年金用診断書を作成する医療機関が異なる場合に取得します。
障害年金では、初診日によって障害基礎年金・障害厚生年金のどちらを請求できるのか、保険料納付要件を満たしているか、障害認定日がいつになるかなどが変わります。
そのため、初診日は非常に重要です。
日本年金機構では、最初の医療機関から証明書を取得できない場合についても、後に受診した医療機関の記録や、当時の受診を裏付ける資料などによって初診日を確認する取扱いを設けています。
受診状況等証明書を取得できないことと、初診日を証明する方法が全くないことは、必ずしも同じではありません。
ただし、代わりとなる資料が見つかれば、必ず初診日が認められるわけでもありません。
資料から何を確認できるのか、その資料がどの程度信頼できるのか、初診日をどこまで絞り込めるのかを整理する必要があります。
まずは、証明書を取得できない理由を確認するところから始めます。
初診日そのものの考え方については、関連記事「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」で詳しく解説しています。
証明書が取れない理由を整理する
同じように「受診状況等証明書を発行できない」と言われた場合でも、その理由によって対応は異なります。
カルテ破棄・廃院・担当医の退職では対応が異なります
カルテの保存期間は5年と聞いて、「10年以上前の受診だから、もう記録は残っていないはず」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、医師法で定められた5年間は、診療録の保存義務に関する期間であり、5年を経過したら必ず廃棄しなければならないという意味ではありません。
実際には、5年を超えてカルテを保存している医療機関もあります。
そのため、10年、20年以上前の受診であっても、最初から記録がないと判断せず、まずは当時の医療機関に問い合わせることが大切です。
医療機関に確認すると、次のような事情が分かることがあります。
- 医療機関は現在もあるが、当時のカルテが廃棄されている
- 医療機関そのものが廃院している
- 当時の担当医が退職・引退している
- 受診記録は残っているが、初診日や診療内容の一部を確認できない
なお、当時の担当医が退職していても、医療機関に診療録が残っていれば、別の医師に受診状況等証明書を作成していただける場合があります。
また、「カルテがない」と言われた場合でも、ほかの診療記録や受付記録が残っている可能性があります。
一方、医療機関が廃院している場合には、診療記録の引継ぎ先がないかなど、確認する対象そのものを調べる必要が生じます。
証明書を取得できない理由については、問い合わせた日付や医療機関からの回答内容を控えておくとよいでしょう。
参考:e-Gov法令検索「医師法」第24条(診療録の保存義務)
最初に受診した医療機関が分からない場合
そもそも最初に受診した病院が分からない、というご相談もあります。
例えば、長年糖尿病の治療を受け、現在は腎不全によって人工透析を行っている方でも、最初に糖尿病の診療を受けた医療機関を思い出せない場合があります。
転勤や引越しが多く、複数の医療機関を受診している場合には、受診した順番や時期が分からなくなっていることもあります。
このような場合には、まず受診歴を整理し、最初に受診した医療機関や受診時期の手掛かりを探すことが大切です。
現在の通院先のカルテや紹介状、過去の健康診断結果などが手掛かりになることもあります。
最初からすべての医療機関名や受診年月日が分かっている必要はありません。確認できる範囲から受診歴を整理し、資料によって補っていくことになります。
受診歴の整理については、関連記事「障害年金の相談前に受診歴を整理する方法」もご参照ください。
最初の医療機関に残る記録を確認する
カルテが残っていないと言われた場合でも、ほかの記録が残っている可能性があります。
ただし、当時の受診を裏付ける資料があることと、初診日を十分に証明できることは、必ずしも同じではありません。
カルテ以外の記録と、証明書の記載根拠を確認する
実際に弊所で取り扱った案件では、紙カルテが保存期間の経過によって廃棄されていたものの、医療機関に当時の診療記録が電子データとして残っていたことがありました。
その記録から、初診年月日、当時の傷病名、処方薬などを確認できる状況でした。
そこで、当時の電子記録に基づいて受診状況等証明書を作成していただくため、記載の参考資料を準備しました。
このように、紙カルテが廃棄されていても、診察当時に作成された電子記録が残っている場合があります。
また、受診受付簿や入院記録などから、当時の受診日を確認できることもあります。
ここで重要なのが、証明書の記載根拠です。
受診状況等証明書の⑩欄には、診療録、受診受付簿・入院記録、その他の資料、本人の申立てなど、何を根拠に記載したかを示す項目があります。
実務上は、まず診療録などに基づく証明書を取得できるか確認します。最初の医療機関で十分な証明が得られなければ、後に受診した医療機関で診療録に基づく証明を取得できないか調べることになります。
一方、診療録以外の記録でも、内容によっては初診日を認める根拠となる場合があります。
ただし、今回の請求にあたり、ご本人様の申立てだけを根拠に新たに作成された証明書では、初診日の証明にはなりません。
どのような記録が残っており、その記録から何を確認できるのかを区別することが大切です。
受診日だけが分かる場合は、診療科や傷病との関係も重要です
昔の受診日が記載された資料だけが残っている場合でも、その資料の有用性は一律ではありません。
例えば、精神疾患による障害年金の請求で、初診年月日と診療科が確認でき、その診療科が精神科であれば、請求する傷病との関連性を推定する有力な手掛かりとなる場合があります。
厚生労働省の通知でも、診察券や入院記録などから初診日と診療科を確認でき、その診療科が精神科など、請求傷病による受診の可能性が高い場合には、初診日を認める取扱いが示されています。
一方、内科を受診した日付だけが分かった場合には、事情が異なります。
受診日と内科という診療科しか分からなければ、精神症状で受診したのか、風邪など別の病気で受診したのかを判断することが難しくなります。
ただし、その後の医療機関の記録に、当時の内科で精神症状について相談していたことや、向精神薬を処方されていたことなどが記載されていれば、事情は異なります。
このような場合には、内科の受診記録と後の医療機関の資料を照合することで、請求傷病との関連性を補強できる可能性があります。
重要なのは、日付を確認できることだけでなく、その受診が請求する傷病に関係していたと、残っている資料から合理的に判断できるかという点です。
次に受診した医療機関の記録を確認する
最初の医療機関から十分な証明を取得できない場合には、次に受診した医療機関の記録を確認します。
2番目の医療機関でも取得できなければ、3番目以降の医療機関へと確認を進めることもあります。
できるだけ古い証明書と、以前の部分的な記録を組み合わせる
基本は、受診した順番に医療機関を確認し、診療録に基づいて受診時期や診療内容を証明できる、できるだけ古い医療機関から受診状況等証明書を取得することです。
一方、それ以前の医療機関で十分な証明書を作成できなくても、受診日など一部の記録が残っている場合には、可能な範囲で資料を確保しておきます。
例えば、3つの医療機関を受診していた場合を考えてみます。
受診した順番に確認する例
① 最初の医療機関
受診日の記録のみ残り、診療内容は確認できない。
対応:日付の分かる資料を確保し、可能であれば確認できる範囲の受診状況等証明書も取得します。
② 2番目の医療機関
カルテ等が廃棄され、証明書を取得できない。
対応:取得できない理由と、医療機関に確認した日付を控えます。
③ 3番目の医療機関
診療録が残り、当時の受診・治療の内容を確認できる。
対応:診療録に基づく受診状況等証明書の作成を依頼します。
この例では、③が、診療録に基づく詳しい証明書を取得できる最も古い医療機関です。一方、①で受診日を確認できる資料も、初診日を裏付ける手掛かりとして残しておきます。
③の証明書と①の部分的な記録を照合し、②の証明書を取得できない事情も整理したうえで、最初の受診日をどこまで裏付けられるか検討します。
なお、③の証明書を取得できたからといって、①の受診日が無条件に初診日として認められるわけではありません。各資料から、請求する傷病との関係を確認する必要があります。
別のケースとして、紹介状が残っている場合もあります。 最初の医療機関から次の医療機関へ送られた紹介状が保存されていれば、以前の受診時期や傷病名、治療内容などを確認できる可能性があります。
長い年月が経過した紹介状が残っているとは限りませんが、当時作成された紹介状は、初診日を裏付ける有力な資料となる場合があります。紹介状がなくても、後の医療機関の診療録に前医の情報が記載されていることもあります。
厚生労働省の通知では、請求の5年以上前に医療機関が作成した診療録などに、当時ご本人様が申し立てた初診日が記載されていれば、その資料をもとに初診日が認められる場合があることも示されています。
また、それぞれの資料だけでは十分に証明できなくても、作成時期や記載内容が異なる客観的な資料が互いに裏付け合うことで、初診日の説明の信頼性を高められる場合があります。
ただし、資料の数だけで決まるわけではありません。資料の作成時期、記載根拠、請求傷病との関係、資料同士の整合性を確認することが大切です。
参考:厚生労働省「障害年金の初診日を明らかにする書類が添付できない場合の取扱い」(平成27年通知・平成31年改正後)
医療機関以外に、初診日の手掛かりはある?
医療機関のカルテや紹介状を確認できない場合には、それ以外の資料も調べます。
お薬手帳・薬局の記録・健康診断などを確認する
過去の精神疾患の案件では、初診クリニックのカルテが廃棄されていたものの、当時の薬剤説明書や薬袋が残っていたことがありました。
その資料には、日付、処方元の医療機関、薬剤名などが記載されており、当時の受診や治療を裏付ける手掛かりとなりました。
このように、診療録が残っていなくても、お薬手帳や薬局の記録などから受診時期を確認できる場合があります。
そのほか、診察券、領収書、健康保険の給付記録やレセプト、過去の診断書、健康診断結果なども確認対象になります。
ただし、資料によって確認できる事実の範囲は異なります。
例えば、薬剤資料から処方日や処方元を確認できても、その日が障害年金上の初診日であると直ちに確定できるわけではありません。
また、健康診断で糖尿病や腎機能の異常を指摘された記録があっても、原則として健診日そのものが初診日になるわけではありません。
医学的に直ちに治療が必要と認められる健診結果など、例外的な取扱いもありますが、まずは健診後にいつ、どの医療機関で診療を受けたのかを確認することが大切です。
昔のメールや手帳、勤務先へ提出した診断書なども、受診先や時期をたどる手掛かりになる場合があります。
実務上は、資料を一つずつ確認し、受診時期、医療機関名、診療科、傷病名、治療内容など、何を裏付けられるのかを整理していきます。
証明書が取得できない場合の申立書と、初診日の推定
最初の医療機関から十分な証明を取得できない場合には、所定の申立書や第三者証明などを利用することがあります。
また、初診日を具体的な一日として特定できなくても、一定の期間内にあると確認できる場合には、年金加入状況や保険料納付状況も重要になります。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」と第三者証明
「受診状況等証明書が添付できない申立書」は、最初の医療機関から証明書を取得できない理由などを説明する書類です。
医療機関名や受診期間のほか、カルテが残っていない、医療機関が廃院しているなどの理由、その確認方法や確認年月日などを記載します。
ここで注意したいのは、この申立書を提出しただけで、初診日が証明されたことになるわけではないという点です。
実際には、後の医療機関の記録やその他の参考資料などによって、初診日を確認できるか検討する必要があります。
また、一定の条件のもとで、当時の受診状況を知る第三者による証明を利用できる場合があります。
特に、当時の診療を担当した医師や看護師など、初診日頃の受診状況を直接把握していた医療従事者から第三者証明を取得できる場合には、非常に有力な資料となります。
厚生労働省の通知では、このような医療従事者による第三者証明について、医療機関による証明と同等の資料として扱い、1通だけでも初診日を認められる場合があることが示されています。
もっとも、長い年月が経過した後に当時の医療従事者と連絡を取り、受診状況を具体的に証明していただくことは、必ずしも容易ではありません。
また、医療従事者であっても、当時の受診状況を直接把握しておらず、後日のご本人様の説明だけをもとにした証明は、この特別な取扱いの対象にはなりません。
通常の第三者証明は、原則として複数の証明が必要であり、三親等以内の親族は証明者になれません。ただし、1通しか取得できない場合でも、受診時の状況が具体的で信憑性が高いと認められれば、参考資料として扱われる余地があります。
20歳以降の初診日については、前述の医療従事者による特例を除き、第三者証明とあわせて客観的な参考資料との整合性を確認します。
さらに、20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求では、一定の条件を満たすことで初診日証明の手続きを簡素化できる場合があります。
どの方法を利用できるかは、初診日の時期や残っている資料などによって異なるため、個別に確認する必要があります。
初診日を一定の期間内に推定できる場合は、年金記録も確認する
初診日の具体的な日付が分からなくても、当時の資料から、一定の期間内に初診日があると確認できる場合があります。
例えば、請求する傷病がまだ発病していなかったことを示す医学的資料と、その後に当該傷病で医療機関を受診していたことを示す資料などから、初診日の範囲を絞り込める場合があります。
このような場合には、初診日を裏付ける資料の信頼性だけでなく、その期間の年金加入状況や保険料納付状況も重要になります。
例えば、初診日の範囲がある年の4月から翌年3月までと確認されたとき、その全期間が厚生年金加入中で納付要件を満たしている場合と、途中で退職し国民年金に切り替わった場合とでは、必要な確認が異なります。
厚生労働省の通知では、初診日が一定の期間内にあることを参考資料で確認でき、その期間を通じて同じ公的年金制度に加入し、どの時点でも保険料納付要件を満たしている場合には、所定の条件のもとで申し立てた初診日を認める取扱いがあります。
また、推定される期間に国民年金と厚生年金の加入期間が混在していても、直ちに初診日が認められなくなるわけではありません。ただし、厚生年金加入中の初診日として障害厚生年金を請求する場合には、その時期を裏付ける追加の参考資料が必要になります。
一方、国民年金加入期間の初診日として障害基礎年金を請求する場合には、同じような追加資料が必須とならない取扱いもあります。いずれの場合も、推定される期間の保険料納付要件などを確認することが前提となります。
推定される期間の一部に保険料納付要件を満たさない時点がある場合には、この方法による確認が難しくなります。なお、未納月があることだけで直ちに納付要件を満たさないと決まるわけではなく、候補となる各時点について確認する必要があります。
実務上は、初診日を裏付ける資料を探すことと、年金加入記録・保険料納付記録を確認することを並行して進めます。例えば、当初は1年間と考えていた初診日の範囲を、処方記録や後の医療機関の診療録などによって数か月に絞り込めれば、加入制度や納付要件の問題を整理できる場合があります。
初診日の資料の信頼性、推定できる初診日の範囲、年金加入・納付状況を組み合わせて検討することが、証明の難しい案件では特に重要です。
参考:厚生労働省「初診日を明らかにする書類が添付できない場合の取扱い」(第2・一定期間内の初診日)
まとめ|初診日の証明で大切なこと
受診状況等証明書を取得できない場合でも、すぐに障害年金の請求を諦める必要があるとは限りません。
まずは証明書を取得できない理由を確認し、最初の医療機関、後に受診した医療機関の順に記録を調べます。診療録の保存義務期間が過ぎていても、電子記録や紹介状などが残っている場合があるため、医療機関に問い合わせることが大切です。
お薬手帳や薬局の記録なども補足資料になります。複数の資料を照合するときは、受診時期だけでなく、その受診が請求する傷病に関係していたと判断できるかを確認します。
初診日が一定の期間内にあると確認できる場合には、その期間の年金加入状況や保険料納付状況をあわせて検討します。
ただし、資料を集めても初診日を十分に証明できず、障害年金が認められない場合もあります。また、古い記録から、当初考えていた時期よりも前に初診日があると分かることもあります。
以前の治療から長い無受診期間がある場合には、「社会的治癒」を検討することもあります。ただし、通院していなかった期間が長いだけで認められるものではありません。詳しくは関連記事「障害年金の社会的治癒とは?初診日の考え方と認められるためのポイント」をご参照ください。
なお、初診日を確認できても、障害認定日頃の診断書を取得できるかどうかは別の問題です。過去にさかのぼる請求については、関連記事「障害年金は過去にさかのぼって受給できる?遡及請求の仕組み」でも解説しています。
大切なのは、証明書が取れないからといって最初から諦めず、一方で、資料が見つかれば必ず認められると考えるのでもなく、確認できる事実と年金記録を一つずつ整理することです。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
初診の医療機関が分からない場合や、カルテの廃棄などによって受診状況等証明書を取得できず、障害年金の請求にお悩みの方は、お気軽にご相談ください。