働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイント
「働いていると障害年金はもらえないのでしょうか」
「収入はいくらまでなら大丈夫ですか」
「障害者雇用であれば障害年金を受給できますか」
障害年金のご相談では、このようなご質問をいただくことがあります。
結論から申し上げると、障害年金には原則として、「月収○万円以下なら受給できる」「週○時間までなら大丈夫」「障害者雇用なら受給できる」といった明確な一律の基準はありません。
一方で、特に精神の障害では、実際にどのような状態で働いているのかが、障害の程度を判断するうえで重要な材料となります。
この記事では、働いている場合の障害年金について、収入、勤務時間、雇用形態、障害の種類などから整理して解説します。
目次
働いているだけで障害年金の対象外になるわけではありません
障害年金は、単純に「仕事をしているか、していないか」だけで決まる制度ではありません。
そのため、働きながら障害年金を受給している方もいます。
ただし、「働きながら障害年金を受給している方がいる」ことと、「働いていても審査に影響しない」ことは同じではありません。
たとえば、現在フルタイムで働きながら障害年金を受給している方であっても、認定を受けた当時は休職中や無職で、その後に就職・復職したという場合があります。
一方、すでに障害年金の認定を受けた方が、その後に仕事を始めたという理由だけで、その時点から自動的に年金が支給停止になる仕組みではありません。
有期認定の場合には、障害の状態に応じて提出が必要となる年に「障害状態確認届(診断書)」が送付され、その時点の障害状態が確認されます。
したがって、「現在の障害状態でこれから請求する場合」と「認定を受けた後に働き始めた場合」は、分けて考える必要があります。
障害年金の更新については、「障害年金の更新は何年ごと?障害状態確認届の時期・提出期限を解説」もご参照ください。
参考:日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届いたとき」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/shougai/jukyu/2019091905.html
収入・勤務時間・雇用形態に一律の基準はありません
障害状態の審査について、原則として「月収○万円以下なら認定される」「週○時間までなら大丈夫」「フルタイムなら対象外」といった一律の線引きはありません。
特に精神・知的障害では、一般企業で働いている場合についても、月収だけではなく、実際の就労状況を総合的にみて判断することとされています。
精神の障害用の診断書にも、勤務先や雇用体系、仕事の頻度、月収だけではなく、仕事の内容、職場での援助の状況や意思疎通の状況を記載する欄があります。
つまり、「いくら稼いでいるか」だけを見ているわけではありません。
障害者雇用についても、障害者雇用だから必ず受給できるわけではなく、一般雇用だから直ちに対象外になるわけでもありません。
フルタイム勤務についても同様で、勤務形態だけを取り出して判断するものではありません。
欠勤・遅刻・早退、仕事内容、職場で受けている援助や配慮、安定して勤務を続けられているかなど、実際の働き方を確認することが重要です。
■ 就労継続支援A型・B型の場合
就労継続支援A型とB型も、同じように考えるものではありません。
A型は、原則として事業所と雇用契約を結んで働くサービスです。
これに対してB型は、雇用契約に基づく働き方ではなく、就労や生産活動の機会などの提供を受ける障害福祉サービスです。
そのため、特にB型については、利用しているという事実だけから、一般企業等で働くことができる状態にあると判断することはできません。
もっとも、A型・B型ともに、利用状況や受けている支援、日常生活の状態などは審査上確認されます。
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html
参考:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」
https://www.nenkin.go.jp/shinsei/jukyu/shougai/shindansho/20140421-23.html
参考:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html
年金制度による違いと、20歳前傷病の所得制限
■ 障害基礎年金は2級まで、障害厚生年金は3級まで
働いている場合の障害年金を考える際には、初診日にどの年金制度に加入していたかも重要です。
障害基礎年金には1級と2級があります。
これに対して、障害厚生年金には1級・2級に加えて3級があります。
そのため、「働いているから受給できる・できない」と考えるだけではなく、初診日に加入していた年金制度と、障害の程度をあわせて確認する必要があります。
■ 20歳前傷病の「所得制限」は別の話です
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金には、受給者本人の前年所得が一定額を超えた場合に、年金の一部または全部が支給停止となる制度があります。
しかし、これは「所得が一定額を超えているから障害等級に認定されない」という制度ではありません。
20歳前傷病の所得制限は、障害年金として認定された方の、その後の年金の支給に関係する制度です。障害状態の審査における就労状況とは分けて考える必要があります。
参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150514.html
参考:日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html
参考:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20200805.html
障害の種類によって、就労状況の影響は異なります
「働いている」という事実が障害年金の審査で持つ意味は、障害の種類によっても異なります。
■ 肢体障害の場合
肢体障害では、障害の部位などに応じ、関節可動域や筋力、日常生活における動作など、具体的な身体機能の状態が重要な判断材料となります。
そのため、会社員として勤務していることだけで直ちに対象外となるわけではありません。就労状況も含め、身体機能や日常生活・労働への制限を総合的に確認します。
■ 精神障害の場合
精神障害では、病状だけでなく、日常生活や社会生活への影響も含めて障害の程度を判断します。
そのため、仕事をしている場合には、安定して勤務できているか、欠勤・遅刻・早退がないか、どのような援助や配慮を受けているか、職場で意思疎通ができているかなども重要になります。
また、仕事をすることで力を使い果たし、帰宅後や休日の日常生活が大きく低下している場合には、就労中だけではなく、就労以外の生活状況も考慮されます。
さらに、精神の障害の中でも見方は一様ではありません。
たとえば、うつ病や双極性障害では症状の経過や変動、統合失調症では症状や療養経過、発達障害や知的障害では仕事内容、意思疎通、管理・指導の必要性など、それぞれの病気や障害の特性を踏まえて判断されます。
参考:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20140604.html
参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/20160715.html
働いている場合は「実際の働き方」を確認することが大切です
障害年金では、「働いているか」「収入はいくらか」「一般雇用か障害者雇用か」「フルタイムか短時間勤務か」という一つの条件だけで、受給できるかどうかが決まるわけではありません。
特に精神の障害では、仕事内容、勤務の安定性、欠勤・遅刻・早退、職場で受けている援助や配慮、就労以外の日常生活の状態などを含めて確認する必要があります。
「働いているから障害年金は難しいかもしれない」と、働いているという事実だけで最初から判断する必要はありません。
一方で、働き方や就労状況が重要な判断材料となる場合があることも事実です。
初診日や加入していた年金制度、障害の種類や病状、実際の働き方、日常生活の状況などを確認したうえで、障害年金の申請を検討できるか整理することが大切です。
少しでもご参考いただけましたら幸いです。
働きながら障害年金を申請できるのか、現在の就労状況が審査にどのように影響するのかなど、障害年金について疑問がございましたら、お気軽にご相談ください。