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障害年金は過去にさかのぼって受給できる?遡及請求の仕組み

はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。

障害年金では、障害認定日時点の障害状態が認められることで、過去にさかのぼって年金を受給できる場合があります。一般的に「遡及請求」「さかのぼり請求」と呼ばれる請求です。

遡及請求で重要になるのは、現在の症状が重いかどうかだけではなく、障害認定日という特定の時期に、障害年金の等級に該当する状態であったかどうかです。

現在から何年も前のことであっても、「以前からずっと調子が悪かった」ということだけではなく、その時期に実際にどのような状態であったのかを確認していくことになります。

この記事では、障害年金の遡及請求の基本と、実際に遡及請求を検討するときのポイントについて解説します。

障害年金の「遡及請求」とは

一般的に「遡及請求」「さかのぼり請求」と呼ばれていますが、障害年金の請求方法として「遡及請求」という独立した項目があるわけではありません。

障害年金には「障害認定日による請求」があり、障害認定日から時間が経過した後にこの請求を行い、過去の年金も支給される場合を一般的に「遡及請求」と呼んでいます。

障害認定日による請求が認められれば、原則として障害認定日の属する月の翌月分から年金が支給対象となります。

障害認定日とは

障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した日です。

ただし、1年6か月以内に傷病が治った場合(症状が固定した場合)などには、それ以前の日が障害認定日となることがあります。

また、20歳前の年金未加入期間に初診日がある「20歳前傷病による障害基礎年金」では、障害の状態を確認する時点が異なることがあります。

障害認定日が20歳到達日前であれば、20歳到達日(20歳の誕生日の前日)の状態を確認します。障害認定日が20歳到達日より後であれば、その障害認定日の状態を確認します。

生まれながらの知的障害の場合には、出生日が初診日として取り扱われ、原則として20歳到達日の状態を確認します。

初診日の考え方については、「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」でも詳しく解説しています。

参考:日本年金機構「障害認定日」

https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/sagyo/ninteibi.html

どの時点の状態で審査されるのか

遡及請求では、症状が一番重かった過去の好きな時点を選んで請求できるわけではありません。

基本となるのは、あくまで障害認定日頃の障害状態です。

原則として、障害認定日以後3か月以内の状態が記載された診断書を用います。

初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となるケースであれば、初診日から見ると、1年6か月から1年9か月頃というかなり限られた時期です。

20歳前傷病による障害基礎年金では、原則として20歳到達日、またはそれ以後の障害認定日の前後3か月以内の状態を確認します。

20歳前傷病の詳しい取扱いについては、「20歳前傷病の障害年金とは?初診日・認定日・遡及請求・所得制限を解説」でも説明しています。

現在から何年も前のことを振り返る場合でも、「その頃は全体的に調子が悪かった」ということだけではなく、この限られた時期に実際にどのような状態であったのかが大切になります。

障害認定日から1年以上経過して請求する場合には、原則として、障害認定日頃の診断書に加えて、現在の状態(請求日前3か月以内)が分かる診断書も必要になります。

参考:日本年金機構「かけはし 第84号」(29ページ・診断書の現症日)

https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/84.files/84.pdf#page=29

診断書を作成できることと、遡及して認められることは別です

障害認定日頃の診断書を作成してもらえるかどうかは、遡及請求を検討するうえで重要なポイントです。

特に長い年月が経過している場合には、当時のカルテが残っているか、その記録をもとに医師が診断書を作成できるかという問題があります。

ただし、診断書を作成できることと、その内容によって障害年金の等級に該当すると認められることは別です。

実務では、診断書の内容だけでなく、障害認定日頃の日常生活、家族などから受けていた援助、就労していた場合には勤務状況や職場での配慮なども確認します。

当時仕事をしていたという事実だけで直ちに難しくなるわけではありませんが、長期間安定して勤務していたなど、当時の実態によっては遡及しての認定が難しいこともあります。

診断書の依頼先や現症日の確認については、「障害年金の診断書とは?種類や注意点を解説」もご参照ください。

さかのぼって受給できるのは原則5年まで

障害認定日から長い年月が経過していても、障害認定日による請求そのものは可能です。

ただし、年金には時効があります。

障害認定日から5年以上経過してから請求した場合、請求日から5年より前の年金は、原則として時効により受け取ることができません。

たとえば、障害認定日が10年前で、その当時の障害状態が認められた場合でも、10年分すべてが支給されるわけではありません。

ここで重要なのは、「5年前の状態から審査する」という意味ではないことです。

審査するのは障害認定日頃の状態であり、支給できる過去分が時効によって原則5年に制限される、という考え方です。

参考:日本年金機構「かけはし 第75号」(4ページ・請求時期・時効)

https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/75.files/75.pdf#page=4

事後重症請求との違い

障害認定日時点では障害年金の等級に該当しなかったものの、その後病状が悪化して障害状態に該当した場合には、「事後重症による請求」を検討することになります。

事後重症請求の場合、支給が認められれば、原則として請求日の属する月の翌月分から年金を受け取ることになります。

障害認定日による請求とは、年金を受け取れる時期が大きく異なります。

実務では、まず現在の状態を確認し、認定日頃をみていきます

遡及請求のご相談であっても、弊所ではまず現在の病状や日常生活、就労状況などを確認し、今後の分について障害年金の支給が見込めるかを考えます。

障害認定日当時の状態は認められず、事後重症による今後の分だけが支給されるケースも少なくありません。 そのため、まずは現在の状態に基づいて、今後の年金を受け取る権利を得られるかどうかを重視しています。

そのうえで、障害認定日頃の診断書や当時の生活・就労状況を確認し、過去の分までさかのぼって受給できるかを丁寧に検討していきます。

制度上は、遡及分だけが支給され、現在以降の年金は支給されない場合もあります。ただし、弊所でこれまで取り扱ってきたケースでは、そのような認定結果は多くありません。

遡及請求を検討するときのポイント

遡及請求では、初診日、障害認定日、当時の診断書、生活・就労状況、現在の状態などを確認していきます。

特に長い年月が経過しているケースでは、当時のカルテが残っておらず、障害認定日頃の診断書を作成できないこともあります。

また、初診日を証明できることと、障害認定日頃の障害状態を確認できることは別の問題です。

初診日の医療機関と障害認定日頃に受診していた医療機関が異なることも珍しくありません。そのため、それぞれの時期について受診歴を整理する必要があります。

受診歴の整理については、「障害年金の相談前に受診歴を整理する方法」もご参照ください。

まとめ

障害年金の遡及請求では、現在の症状だけではなく、障害認定日という限られた時期にどのような状態であったのかが重要になります。

また、障害認定日頃の診断書を作成できることと、その内容で障害等級に該当すると認められることは別です。当時の日常生活や就労状況なども含めて確認する必要があります。

「遡及請求なら必ず5年分受給できる」「5年前の状態を証明すればよい」というものでもありません。

初診日、障害認定日、当時の障害状態、現在の状態などを確認し、それぞれのケースに応じて請求方法を検討することが大切です。


少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。

遡及請求について確認したいことや、請求の可能性についてお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。

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