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障害年金の受給中に働き始めたら?更新への影響と支給停止の考え方

はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。

「障害年金を受給していますが、働き始めたら年金は止まるのでしょうか」

「初回の認定時には無職でしたが、今は働いています。次の更新が心配です」

障害年金のご相談では、このようなご質問をいただくことがあります。

障害年金は、受給中に就職や復職をしても、そのことだけを理由に直ちに支給停止となるわけではありません。

ただし、定期的な更新が必要な方は、指定された年に現在の障害状態が審査されます。特に精神疾患では、初回認定時と更新時で就労状況が変わったことが、等級の判断に影響する場合があります。

この記事では、就労開始から次の更新、診断書の対象期間、更新結果が支給に反映されるまでの流れを整理し、実際の更新事例も交えて解説します。

働き始めても、直ちに支給停止にはなりません

障害年金2級の認定を受けた当時は無職だった方が、その後、障害者雇用で就職したり、以前の勤務先に復職したりすることがあります。

この場合、就労を開始した事実だけで年金が自動的に止まる仕組みではなく、通常は次の更新まで従前の認定に基づく支給が続きます。

一方で、有期認定の場合には、次の更新時に症状や日常生活能力、就労状況などが改めて確認されます。働き始めたからといって直ちに止まるわけではありませんが、次の更新でも同じ等級が維持されるとは限りません。

なお、20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限は別の問題です。 この年金にはご本人様の前年所得による支給制限があり、更新の時期とは関係なく、所得によって年金の半額または全額が停止される場合があります。通常の障害基礎年金や障害厚生年金には、原則として給与収入の額だけで支給を停止する一律の所得制限はありません。

また、今回扱う「受給開始後に働き始めた場合」と、「現在働いている状態で新たに請求する場合」は、分けて考える必要があります。新規請求については、働いていても障害年金はもらえる?仕事・収入・就労状況と審査のポイントをご参照ください。

参考:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」

更新はいつ?誕生月末日と診断書の対象期間

障害年金には、定期的に障害状態を確認する「有期認定」と、原則として定期的な更新を必要としない「永久認定」があります。

有期認定の場合、障害の状態に応じて、1年から5年ごとのいずれかの年に更新が行われます。更新が必要な年には、日本年金機構から「障害状態確認届(診断書)」が、原則として誕生月の3か月前の月末に送付されます。

提出期限は、指定された年の誕生月末日です。 診断書には、その提出期限前3か月以内のいずれかの日の障害状態を記載してもらい、期限までに日本年金機構へ到着するように提出します。

例えば、6月生まれの方が、その年に更新を迎える場合は次のとおりです。

時期 手続き・確認すること
3月末頃 日本年金機構から障害状態確認届が送付される
4月1日~6月30日 この期間内のいずれかの日の障害状態を診断書に記載してもらう
6月30日 障害状態確認届の提出期限(日本年金機構に到着)
提出後 現在の障害状態について更新審査が行われる

つまり、6月生まれの方であれば、4月1日~6月30日のいずれかの日を現症日とした診断書によって審査されます。精神の障害用診断書では、その時点の状態に加えて、最近1年間の治療・就労の経過なども記載するため、更新までの働き方が判断材料となります。

更新の間隔や手続きの詳細については、既存記事障害年金の更新のタイミングでも解説しています。

参考:日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届いたとき」

更新審査の結果、年金はいつから変わる?

障害状態確認届による審査では、従前と同じ等級が維持される場合のほか、上位・下位等級への変更や支給停止となる場合があります。結果によって、年金額が変わる時期も異なります。

6月30日が提出期限の場合、通常の更新審査では次の取扱いになります。

更新の結果 年金への反映
同じ等級で継続 従前の等級で支給が続く
上位等級へ変更 原則として7月分から増額
下位等級へ変更 原則として10月分から減額
支給停止 原則として10月分から停止

日本年金機構によれば、通常の更新で障害の程度が重くなり増額となる場合は、提出期限の翌月分から変更されます。一方、障害の程度が軽くなったことによる減額や支給停止は、提出期限の4か月後の年金額から適用されます。

したがって、6月末が提出期限で、期限内に適切な診断書を提出して通常の更新審査を受けた場合、仮に減額や支給停止と判断されても、7月・8月・9月の3か月分は原則として従前の等級で支給されます。減額・停止は原則として10月分からです。ここでいう月は「年金の対象月」であり、実際の振込月とは異なります。

ただし、20歳前傷病による所得制限など、更新審査とは別の理由で支給が制限される場合は例外となります。また、診断書の未提出・提出遅れ・記載不備による一時的な支払差止めは、更新審査に伴う減額や支給停止とは別の取扱いです。

なお、複数の認定医による審査が長期化した一定の案件では、減額・支給停止の適用が上記より後の月となる取扱いがあります。実際の適用月は、日本年金機構から届く通知で確認してください。

また、障害厚生年金2級から3級に変更された場合は、障害厚生年金は3級で継続しても、併せて受給していた障害基礎年金は支給停止となります。一方、障害基礎年金には3級がないため、障害基礎年金2級のみの方が2級に該当しなくなれば、支給停止となる場合があります。

参考:日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届きましたが、どうすればいいですか」

参考:厚生労働省「障害状態確認届の取扱いに関する通知改正(令和8年5月15日)」

初回認定時は無職、更新時は就労中の場合

ここからは、精神疾患による障害年金を中心に、更新時の実務的な判断について説明します。

初回認定時には無職や休職中だった方が、その後に働き始め、更新時には一定の勤務を続けている場合、前回と現在の就労状況の違いは重要な判断材料になります。

ただし、日本年金機構の障害認定基準では、就労している事実だけで直ちに日常生活能力が向上したと捉えず、仕事内容や就労の状況、職場で受けている援助、周囲との意思疎通などを確認することとされています。

勤務の安定性と、職場で受けている援助・配慮

更新時には、単に「週5日勤務」「一般雇用」「障害者雇用」といった情報だけでなく、実際にどのような条件で就労を続けているかを確認します。

  • 勤務日数・時間、実際の出勤状況、欠勤・遅刻・早退・休職の状況
  • 担当する仕事内容、業務上の責任、複雑な業務への対応状況
  • 短時間勤務・在宅勤務・電話対応の免除などの具体的な配慮
  • 上司・同僚・ジョブコーチなどから受けている援助
  • 就労をどの程度安定して継続できているか

障害者雇用で担当業務を限定され、継続的な支援を受けている方もいれば、一般雇用で一定の配慮を受けながら働いている方もいらっしゃいます。

職場の配慮があるから従前の等級を維持できるというわけではありません。 一方、配慮を受けていることを無視して、勤務時間だけから判断することも適切ではありません。就労の安定性と、その就労を支えている援助の両方が重要です。

仕事以外の日常生活に生じている支障

仕事を続けることで精一杯となり、帰宅後は長時間横になっている方や、食事・掃除・買い物・金銭管理などをご家族様の援助に頼っている方もいらっしゃいます。

精神の障害用診断書の記載要領でも、就労によって仕事以外の日常生活能力が著しく低下している場合には、その状況を具体的に記載することが求められています。

ただし、勤務後の疲労や家事への援助があるだけで、直ちに従前の等級が維持されるわけではありません。病状、勤務の実態、仕事以外の生活能力、援助の必要性を総合的に確認することが大切です。

参考:日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン等」

参考:日本年金機構「精神の障害用診断書の記載要領」(PDF)

無職から就労を始め、更新でも障害厚生年金2級となった事例

弊所が対応した日本年金機構の更新案件には、新規請求時には無職だった方が、その後に就労を開始し、更新でも障害厚生年金2級として認定された事例があります。就労状況の異なる2件をご紹介します。なお、個人が特定されないよう、詳細の一部は省略しています。

障害者雇用で勤務しながら、2級が継続した事例

お一人目は、新規請求時には無職でしたが、その後、障害者雇用で就職された方です。更新時にも勤務を継続していましたが、担当する業務が限定され、仕事内容や対人対応などについて配慮を受けていました。

また、職場では継続的な支援を必要としていました。一人暮らしではありましたが、日常生活でもご家族様や周囲の方から援助を受けていました。

このような就労・生活状況のもと、更新でも障害厚生年金2級として認定されました。

一般雇用で勤務していた方が、2級となった事例

もうお一人は、新規請求時には無職でしたが、その後、一般企業へ就職された方です。在宅勤務や勤務時間・業務内容の調整など、相当程度の配慮を受けていました。

しかし、欠勤が多く、更新用診断書の作成時点では、雇用の継続が難しい状況となっていました。日常生活でも、周囲の方や福祉サービスなどの援助を必要としていました。

この方も、更新の結果、障害厚生年金2級として認定されました。 ただし、一般雇用で安定した勤務を続けながら2級となった事例ではない点に注意が必要です。

今回の2例はいずれも、気分障害に加えて発達障害が併存していた方です。 対人関係や意思疎通、業務の進め方などにも困難があり、仕事と日常生活の両面で援助を必要としていました。

発達障害が併存していれば2級になるという意味ではなく、それぞれの症状や生活上の制限が総合的に判断された事例です。

一方、うつ病や双極性障害などの気分障害のみで、今回の事例と同程度の就労をしている場合には、弊所の実務上、2級の維持は難しく、障害厚生年金では基本的に3級相当を想定して検討します。 安定した一般雇用を続けている場合などは、3級にも該当しないと判断される可能性があります。

これは弊所の実務経験に基づく見通しであり、診断名や雇用形態だけで等級が決まるという一律の認定基準ではありません。気分障害のみで就労している方の2級を、一律に否定するものではありません。

今回の2例の結果を、気分障害のみの方を含むすべての就労中の受給者に当てはめることはできません。

更新用診断書には就労状況の変化を正確に伝える

初回認定時には無職だった方が、その後に働き始めた場合には、前回から変化した点を主治医の先生に正確に伝えることが重要です。

精神の障害用診断書には、最近1年間の治療・就労の経過、現症時の勤務内容や職場での援助、日常生活能力などを記載する欄があります。就職時期、勤務日数・時間、欠勤や休職、職場で必要としている配慮、家庭生活での支障などを整理しておくと、実際の状態を伝えやすくなります。

普段の診察では、職場の細かな業務内容や、帰宅後・休日の生活状況まで十分に伝わっていないこともあります。弊所でも、更新に際して、前回診断書からの変化と現在の就労・生活状況を整理した参考資料を作成することがあります。

ただし、診断書の医学的な評価は主治医の先生が行うものです。等級を維持するために就労状況を過小に伝えたり、症状を実際より重く説明したりするのではなく、現在の状況を正確に伝えることが大切です。

精神の障害用診断書の見方については、障害年金の精神の診断書とは?日常生活能力や就労状況のポイントでも解説しています。

参考:日本年金機構「精神の障害用の診断書を提出するとき」

まとめ

障害年金を受給している方が就職・復職しても、そのことだけを理由に直ちに年金が支給停止になるわけではありません。通常は次の更新まで従前の認定に基づいて支給が続きます。

有期認定の場合には、1~5年ごとの指定された年に、誕生月末日を期限として障害状態確認届を提出します。診断書には提出期限前3か月以内の状態が記載され、就労状況も含めて審査されます。

通常の更新で減額や支給停止となる場合、その変更は原則として提出期限の4か月後の年金額から反映されます。一方、期限内の適切な提出がない場合や、20歳前傷病の所得制限などは別の取扱いです。

特に精神疾患では、「働き始めたら直ちに止まるのか」と「次の更新でどの等級に該当するのか」を分けて考えることが重要です。就労を始めた後も2級が維持された実例はありますが、勤務の安定性や援助の必要性などによって、更新の見通しは大きく異なります。


少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。

障害年金の受給開始後に就職・復職し、次の更新についてご不安のある方は、お気軽にご相談ください。

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