障害者手帳と障害年金の違いとは?等級の関係や手帳がない場合も解説
はる社会保険労務士事務所の特定社会保険労務士の宮岡です。
日頃から障害年金のご相談・申請支援に携わっています。
障害者手帳と障害年金は別の制度です。手帳を持っていなくても障害年金は請求できますし、手帳の等級と障害年金の等級が必ず一致するわけでもありません。
障害年金のご相談では、「障害者手帳を持っていないと申請できませんか?」「手帳が3級なら、障害年金も3級になりますか?」といったご質問をいただくことがあります。
ただし、傷病によっては手帳の等級や検査結果が障害年金の認定可能性を考える参考になるなど、両制度には実務上の接点もあります。
この記事では、障害者手帳と障害年金の違いや、障害年金の請求にあたって手帳の情報が役立つ場合について解説します。
目次
障害者手帳と障害年金は別の制度です
障害者手帳は、障害のある方が福祉サービスや各種支援を受ける際などに利用されるものです。
一方、障害年金は、病気やけがによって一定の障害状態となった場合に、生活を支えるために支給される公的年金です。
障害者手帳には、主に次の3種類があります。
- 身体障害者手帳:身体の機能に障害がある方を対象とする手帳
- 精神障害者保健福祉手帳:精神障害によって日常生活や社会生活に制限がある方を対象とする手帳
- 療育手帳:知的障害のある方を対象とする手帳
身体障害者手帳は1級から6級、精神障害者保健福祉手帳は1級から3級に区分されています。療育手帳は自治体によって区分や名称が異なります。
これに対し、障害年金は、障害基礎年金が1級・2級、障害厚生年金が1級・2級・3級です。
制度の目的や認定基準が異なるため、手帳の等級をそのまま障害年金の等級に当てはめることはできません。
参考:厚生労働省「障害者手帳について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/techou.html
手帳の等級から障害年金の等級は分かる?
たとえば、精神障害者保健福祉手帳3級の方が、障害基礎年金2級に認定されることもあります。
反対に、障害者手帳を取得していても、障害年金では障害等級に該当しないと判断される場合があります。
ただし、手帳の等級がまったく参考にならないというわけではありません。
障害の種類によっては、手帳と障害年金で評価する項目が重なっているためです。
参考:日本年金機構「障害等級表」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/ninteikijun/tokyuhyo.html
身体障害では、検査結果が参考になる場合があります
視覚障害や聴覚障害などでは、身体障害者手帳と障害年金の双方で、視力・視野や聴力などの検査結果が判断材料となります。
そのため、手帳の等級や取得時の検査結果から、障害年金の認定可能性をある程度検討できる場合があります。
一方、肢体の障害では、関節の動きや筋力、歩行能力、日常生活動作なども確認する必要があります。
評価項目が重なる場合でも、認定基準まで同じとは限りません。障害年金では改めて該当する基準を確認することになります。
精神・知的障害では、日常生活の実態が重要になります
精神障害者保健福祉手帳や療育手帳についても、等級や判定結果は参考になりますが、それだけで障害年金の等級が決まるわけではありません。
実務では、診断書や知能検査などの結果に加えて、食事や身の回りのこと、金銭管理、対人関係など、日常生活にどのような困難があるのか、家族等からどの程度の援助を受けているのかを確認します。
また、就労している場合には、勤務時間や仕事内容だけでなく、欠勤・休職の状況や、職場で受けている配慮・援助なども重要になります。
手帳の等級を一つの参考情報としながら、実際の生活や就労の状況を踏まえて障害年金の可能性を検討することが大切です。
精神の障害用診断書については、「障害年金の精神の診断書とは?日常生活能力や就労状況のポイント」でも解説しています。
障害者手帳を持っていなくても障害年金は請求できます
障害年金を請求するために、障害者手帳を取得している必要はありません。
障害年金では、初診日や障害認定日・請求時点の障害状態、必要な場合には保険料納付要件など、年金制度上の要件をもとに審査されます。
そのため、手帳を持っていないことだけを理由に、障害年金を請求できなくなるわけではありません。
実際のご相談でも、精神障害者保健福祉手帳を取得していない方について、うつ病などによる障害年金の請求を進めることがあります。
手帳の取得を先に済ませる必要はなく、障害年金として必要な要件を確認していくことになります。
精神の障害年金が決定した場合、手帳の申請に利用できることがあります
精神障害者保健福祉手帳については、障害年金との間に特別な取扱いがあります。
精神障害を理由として障害年金を受給している場合には、年金証書などを利用して、精神障害者保健福祉手帳の新規申請や等級変更の手続きを行うことができます。
この方法で申請した場合には、原則として、障害年金と同じ等級で手帳が認定されます。
たとえば、精神障害を理由として障害基礎年金2級が決定した場合には、年金証書などを使って精神障害者保健福祉手帳2級を申請することができます。
弊所でも、障害年金の受給が決定した方に対し、年金証書が届いた後の手帳申請や等級変更についてご案内することがあります。
ただし、障害年金が決定すれば、自動的に手帳が交付されるわけではありません。別途申請が必要となり、年金証書のほか、現在の受給状況を確認できる書類などを求められることがあります。
必要書類については、お住まいの自治体の窓口で確認しておきましょう。
なお、手帳用の診断書によって申請する場合には、手帳としての認定が行われるため、必ずしも障害年金と同じ等級になるとは限りません。
参考:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta4614&dataType=1&pageNo=1
療育手帳は、初診日や過去の障害状態を確認する資料にもなります
知的障害による障害年金の請求では、療育手帳の取得時期や過去の判定履歴が参考になることがあります。
生まれながらの知的障害について過去にさかのぼって請求を検討する場合には、原則として20歳到達日頃の障害状態を確認します。
しかし、現在から長い年月が経過している場合には、当時の医療記録が残っていないこともあります。
そのような場合、療育手帳の過去の判定結果や知能検査の記録、学校生活の状況などが、当時の障害状態を確認するための参考資料となることがあります。
20歳前傷病の認定日などについては、「20歳前傷病の障害年金とは?初診日・認定日・遡及請求・所得制限を解説」でもご案内しています。
また、療育手帳に限らず、障害者手帳や取得時の診断書が、初診日を確認するための手掛かりになる場合もあります。
参考:日本年金機構「かけはし別冊」(初診日を確認するための参考資料)
https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/bessatu.files/bessatu.pdf#page=5
知的障害では、初診日に特別な取扱いがあります
障害年金では、生まれながらの知的障害については、出生日を初診日として取り扱い、原則として初診日の証明は必要ありません。
一方、幼少期の高熱や頭部外傷など、出生後の病気やけがによって知的障害が生じた場合には、原因となった傷病で初めて医師の診療を受けた日を確認する必要があります。
そのため、療育手帳を所持している方でも、知的障害が生じた経緯によって初診日の取扱いが異なる場合があります。
初診日の確認方法については、「障害年金の初診日はいつ?確認するときのポイント」もご参照ください。
参考:日本年金機構「かけはし別冊」(3ページ・知的障害の初診日)
https://www.nenkin.go.jp/service/riyoushabetsu/cooperator/kakehashi/bessatu.files/bessatu.pdf#page=3
まとめ
障害者手帳と障害年金は別の制度であり、手帳の等級と障害年金の等級が必ず一致するわけではありません。
また、障害者手帳を持っていなくても、障害年金を請求することはできます。
一方で、傷病によっては、手帳の等級や取得時の検査結果、過去の判定履歴などが障害年金の請求を検討する際の参考になることがあります。
さらに、精神障害による障害年金が決定した場合には、年金証書などを利用して精神障害者保健福祉手帳を申請できる場合もあります。
手帳の有無や等級だけで判断せず、初診日や障害状態、日常生活・就労状況などを整理し、それぞれの制度について確認することが大切です。
少しでもご参考にしていただけましたら幸いです。
障害者手帳の等級と障害年金の関係や、手帳をお持ちでない場合の請求についてお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。